放置され令嬢と無口な氷の侯爵&雪だるま。『す』の続きが言えるまで

廊下を歩きながらフィーネはクローヴィスを褒め称えた。

「クローヴィス様、頑張りましたね」
「もう、雪だるまはいないからな」
「そうですね。その分クローヴィス様が頑張らないと。スラちゃんと約束したので私もクローヴィス様を鍛えないといけませんので」

「むず痒いな……」
「え? 何か言ってくれるのですか? もしかして『す』ですか?」

クローヴィスは、周りに人がいない事を確認している。それから人がいない事を確かめるとフィーネの顔をじっと見る。
ついに言うのだろう。見つめ合いながらフィーネは、クローヴィスの「好き」待ちだ。

「す……」
「ほら、頑張ってください!」
「す、みれ。す……だち。」
「ほら、ほら」
「す、す。す、ずめ。スケート。スイートピー。スノーマン」

どんどんかけ離れてしまうのでフィーネは、コテンと右に傾く。それでも気持ちを立て直して、胸の前でファイティングポーズを取りながら応援する。

「あともう少しです!」

ここで他の人が来てしまったら、もうこの時間には言えない。

「愛している」
「!!!!」

少し拗ねるように言ったクローヴィスに、フィーネは驚きを隠せない。両手で口元を押さえ、目を見開く。

(噓でしょう?! だって、だって、好きも言えないのに?? ちょっとキザだけど、大人のクローヴィス様にはこっちのほうが言い易いのかしら?)

何手か、すっ飛ばしたクローヴィスの発言にフィーネは、ときめいた。
沈黙に耐えかねたクローヴィスは背を向けて歩き出す。

その背中に好きという気持ちを込めてフィーネは抱きついた。