放置され令嬢と無口な氷の侯爵&雪だるま。『す』の続きが言えるまで

フィーネは涙ぐむ。
とうとう明日は雪だるまが百日を迎えてしまうのだ。
フィーネとクローヴィスの仲を取り持ってきた雪だるまとの別れは寂しい。
夜中にランタンを手に持ちバルコニーに座り込むフィーネ。

「あなたが居なくなるのは悲しいわ」
『雪の国帰っても、忘れない』

雪の国とは妖精や精霊、精霊王の住むところだろう。

「何かして欲しいことある?」
『名前、呼んで欲しい!』
「良いの?」

この雪だるまはクローヴィスが魔法で呼び出した精霊の類いだ。精霊は人に名前を呼ばせることは滅多にない。

「スラちゃん!」

雪だるまは嬉しそうに跳ねる。

『フィーネ、大好き』

雪だるまが可愛くてフィーネは余計に泣きそうになる。

『いつでも見てるフィーネ悲しくない』

心を読んだ雪だるまは首を傾げる。

『クローヴィス呼ぶ?』
「もう寝ているかもよ」

雪だるまは枝の手で魔法を使うと、フィーネの部屋から物音がする。
書類の束とともにクローヴィスが現れた。書類が雪崩落ちて来る。

「……フィーネと雪だるまの仕業だな」
「ああ、書類が、まだお仕事中でしたか、すみません」
『お別れのついでにクローヴィス呼んでみた』
「俺はついでか」

クローヴィスのツッコミを無視してフィーネは雪だるまを撫でた。

「スラちゃん優しい」