放置され令嬢と無口な氷の侯爵&雪だるま。『す』の続きが言えるまで

「クローヴィス様、『す』」
「またそれか」
「今度は私が鍛えなおします」
「頼もしいな」

クローヴィスは繋いだフィーネの手をコートのポケットに入れた。
フィーネの胸が高鳴る。

「『す』の次が聞けるとうれしいのですが……」
「……むず痒い」

クローヴィスは思っていないから言えないわけではない。
クローヴィスはフィーネの顔を上から覗き込む。

「フィーネ」
「はい?」
「好、き」

変なリズムになったようで、すぐ顔を背けるクローヴィス。
ちゃんと言えるまで、もう少しだ。

(本当にこの人、年上かしら? むしろ年上だから恥ずかしいのかしら?)

呆れるのではなくこのどこまでも不器用な所に微笑んでしまう。

「フィーネからの手紙はまだ読めてないから返事ができず、すまない」
「ひゃああ、それは!」

夜中にも書いたからきっと内容は恥ずかしいものだろう。

「冷静には読まないでください」
「どんな内容なんだ?」
「好きな気持ちを集約したような内容です」
『フィーネ、一生懸命書いた』
「そうか……それはじっくり読んでみたいな」
「その手紙の返事は、いいですからね。別の返事をください」

空いているほうの手でフィーネの頭を撫でるクローヴィス。
寒さを全然感じないのは雪の精霊の祝福のせいだけではなかった。