放置され令嬢と無口な氷の侯爵&雪だるま。『す』の続きが言えるまで

クローヴィスに連れられるフィーネ、雪を踏む音だけが響く。

「クローヴィス様、何かあったのですか?」
「いや、何でもないが心配した」

クローヴィスはフィーネを優しく抱きしめた。

「クローヴィス様」
「こんなオジサンでも良いか?」

フィーネはクローヴィスの背中に手を回した。

「はい!」
「フィーネ」
「クローヴィス様、好きって言ってください」
「急には難しい」
「じゃあ、お手本をひとつ」

フィーネはクローヴィスの背中に回している手に、もっと力を入れる。

「クローヴィス様、好き」
「ありがとう」

恥ずかしさでお互いの顔は見ないのだが、クローヴィスの声は震えている。

『クローヴィスも言って』

いつのまにか居る、雪だるまの声だ。

「フィーネ、す……」
「す、ですか?」
『クローヴィス、ヘタレ』

フィーネがクローヴィスを見ると耳が赤い、ここら辺りが限界らしい。

「私のこと『す』なのですね」
『すぅ?』
「……言えなくて、すまない」
「すまないの『す』かもしれませんよ?」
「本当に勘弁してくれ」

あと一文字が言えなくて困っているクローヴィスに笑ってしまうフィーネ。

(クローヴィス様は本当に不器用だわ!)

「でも気持ちだけはわかりました」
「ああ」
「そんなクローヴィス様も好きですよ?」

フィーネの不意打ちに額に手を当てるクローヴィス。

『フィーネのほうが上手』

手を繋いで歩く二人。周りにはちゃんと婚約者同士に見えているだろうか、それだけが気になった。