きっと、夏のこと




牧田さんは、私の変化に気づかなかった。

私のちょっと大人になった髪型も、新しい鞄も、新しい服も、新しいネイルも。

私の成長にも。

あの頃の、初めて出会った高校二年生の私のまま、何も知らない私のまま。
牧田さんを知らない、あの頃の私のままで。







一度も、ほんの一回も呼ばれることがなかった私の名前。
ラインの画面を何スクロールしても見つからない、
ずっとずっと下に行ってしまった私の名前。
牧田さんはきっともう覚えていない。







急におかしくなって、満員電車に揺られながら、
ふっと笑った。


「ばいばい、牧田さん」


私の声は満員電車の熱気の中で静かに蒸発していった。