あの花が咲く場所で、キミと初恋をもう一度。



――…ここはどこだろう?


薄紫の花がたくさん咲いている野原。


どこからか女の子の泣き声が聞こえる。


泣いているのは……わたし?


「どうしたの? なんで泣いてるの?」


「お姉ちゃんがもうすぐ手術するの。ママは〝大丈夫だよ〟って言ってるけど、お姉ちゃんが死んじゃったらどうしようって思うとこわいの」


「そっか。でも、お姉ちゃんの方がきっともっとこわいと思うよ。大丈夫、きっと元気になるよ」


「ホントに?」


「ホントだよ。ぼくも手術したことあるけど、今は元気でしょ?」


「…………」


「大丈夫だから、もう泣かないで」


「……うん」


「ここ、花がたくさん咲いてるんだね」


「このお花、しおんっていうの。わたしと同じ名前なんだよ。このお花大好きだから、お姉ちゃんにあげようと思って、ここに来たの」


「きみの名前、しおんちゃんっていうんだ。かわいい名前だね」


***


「紫苑(しおん)、そろそろ起きなさい!」


お母さんの声が聞こえて目が覚めた。


枕元の時計を見ると、ちょうど6時半。


もう起きないといけない時間だ。


わたしはベッドから起きて、窓のカーテンを開けた。


今日から9月だけど、陽射しはまだまだ夏めいてる。


空は真っ青な快晴で、気持ちがいい。


……また、あの夢見たな……。


紫苑の花が咲く野原で泣いているわたしが、知らない男の子と話をする夢。


前にも何度か同じ夢を見たことがある。


あの夢は、一体なんだろう?


本当にあったことなの?


あの男の子は誰なの?


本当にあったことなのか、ただの夢なのか、わからない。


でも、なぜか懐かしいような感じがする。


下へ降りると、お母さんはキッチンで朝食を作っていた。


「おはよう。ちゃんと起きられたのね。莉苑(りおん)はもう起きてるわよ」


「おはよう。お父さんはもう仕事行ったの?」


「うん。今日はいつもより早く行ったわよ。ご飯もうすぐできるから、待ってて」


「は~い」


リビングに行くと、莉苑ちゃんがテレビを観ていた。


「莉苑ちゃん、おはよう」


「あ、おはよう、紫苑 」


「今日から2学期だね」


「そうだね。なんかユーウツだね」


「でも、今日は始業式だけだから、早く帰れるね」


莉苑ちゃんとふたりで話していたら、


「はい、お待たせ。たくさん食べてね」


お母さんが朝食を運んできてくれた。


「いただきます!」


ふたりで声を合わせて朝食を食べる。


これが、わたし・藤咲 紫苑の毎朝のルーティーン。


現在中学1年のわたしは、少女漫画を読んだり流行の音楽を聴いたり友達とお喋りするのが大好きな、ごく普通の平凡女子。


そして、1歳上の姉・莉苑ちゃんは、わたしと同じ中学に通っている2年生。


人目を引く整ったキレイな顔立ちで、華奢で背が高い。


成績も良くて、優しくて、料理や裁縫が得意で家庭的な完璧女子。


わたしが男の子だったら、結婚したいくらい!


でも、実は莉苑ちゃんは生まれつき体が弱くて、学校も結構休んでいる。


今でも定期的に病院に通っているし、小さい頃に長期入院して、手術したこともある。


だけど、莉苑ちゃんは体が弱いからって甘えたりしない。


自分にできることは頑張りたいって、勉強にも一生懸命取り組んでる。


見た目は華奢で繊細だけど、芯は強くて、しっかりしていると思う。


莉苑ちゃんに憧れてる人はたくさんいるし、当然、男子にも人気がある。


入学してから何度か告白もされているみたいだけど、「本当に好きな人じゃないとつきあえない」と言って、一度も受けたことがないらしい。


そういうところ真面目で、いいと思う。


それから、莉苑ちゃんはいつもわたしの話を親身になって聞いてくれる。


悩んでいるときは相談に乗ってくれるし、落ち込んでいるときは元気づけてくれる。


だから、わたしは莉苑ちゃんのことが大好きなんだ。


お父さんとお母さんも私たちのことよく理解してくれてるし、大事にしてくれている。


お父さんとお母さんは今でも仲がいい。


高校時代からつきあっていて、大学卒業と同時に結婚して、そのあとすぐに莉苑ちゃんとわたしが生まれたから、ふたりともまだ若い。


お父さんもお母さんもお姉ちゃんも、わたしは本当に大好きなんだ。


* * *


「ねぇ、聞いた? うちのクラスに転入生が来るの!」


始業式のあと、体育館から教室に戻る途中で、親友の沙苗(さなえ)が弾んだ声で言った。


「ホントに?」


「ホントだよ。さっき先生が言ってたから」


「そうなんだ」


この時期に転入なんて、珍しいな……。


「あ~EDEN (エデン) の(れん)くんみたいな男の子だったらいいな~」


沙苗が夢見る瞳で呟いた。


蓮くんっていうのは今大人気のアイドル・グループ『EDEN』に所属しているメンバーのこと。


沙苗は小学生の頃からアイドル大好きで、最近はEDENに夢中らしい。


「現実はそんな甘くないと思うよ?」


「もう、紫苑は夢がないな~」


わたしの言葉に沙苗は不満そうに口を尖らせた。


ふたりで話しながら教室に戻って「席は誰の隣になるのかな?」と話を続けていたら、担任の先生が教室に入って来た。



「もうすでに知ってる人もいると思うけど、今日からこのクラスの生徒になる転入生を紹介します」


先生の言葉に、教室中が騒がしくなった。


「葉月くん、中に入って」


先生が廊下で待っていたらしい転入生に声をかけると、男の子が教室に入って来た。


その瞬間、「カッコいい~」「めちゃイケメン」「スタイルいい~」とあちこちからそんな言葉が聞こえてきた。


わたしも一目見てビックリした。


まさかこんなイケメンが転入生なんて、ホントに沙苗の期待通りじゃない。


思わず沙苗の方を見ると、「やったね」っていう笑顔でピースしてきた。


相変わらずミーハーなんだから。


少し呆れながら転入生の方へ視線を戻すと、


葉月(はづき) (しゅう)です。よろしくお願いします」


転入生の葉月くんが挨拶をした。


栗色のサラサラの髪に、整った顔立ち。


華奢で背が高くて、育ちが良さそうで、優しそう。


癒し系っていう言葉がピッタリな感じ。


なんとなく、雰囲気が莉苑ちゃんに似てるかもしれない。


「……藤咲さん!」


思わず葉月くんに見とれていたら、突然先生がわたしの名前を呼んだ。


「……はい!?」


「隣の席が空いているから、葉月くんには藤咲さんの隣に座ってもらいます。よろしくね」


慌てて返事をすると、先生が笑顔で言った。


2学期初日から、ラッキーかも……?



* * *



「紫苑、校内のイケメン男子特集に麻井(あさい)先輩入ってるよ!」 


二学期が始まって一週間が過ぎたある日、沙苗がわたしに校内新聞を見せてきた。


「麻井先輩、小学生の時から結構人気あったもんね~」


「そうだね」


「あ~紫苑が羨ましいよ~。こんな人気のある人とつきあってるなんて」


「いや、でもまだつきあい始めたばかりだし」


「へぇ、藤咲さんってつきあってる人いるんだ?」


沙苗とふたりで話していたら、隣の席で英語の予習をしながら話を聞いていたらしい葉月くんに声をかけられた。


隣の席だから結構話すし、今では気軽に会話できるようになったんだけど、さすがに恋愛の話は恥ずかしい。


「え~っと……」


なんて答えたらいいかわからない。


麻井先輩は同じ小学校出身で、バスケ部に入っていて女子に人気があるモテ男子。


笑顔がさわやかで優しい雰囲気だなとわたしも好感を持っていたんだけど、1学期の終わり頃に告白されて、つきあうことになった。


でも、まだ学校帰りにお茶したことしかないんだよね。


「紫苑の記念すべき初カレでしょ」


「……うん」


沙苗に言われて、わたしが返事をしたそのとき。


「藤咲さん、モテ男子とつきあってるからって大声で自慢しないでくれる?」


突然、後ろの方からキツイ言葉が聞こえてきた。


こんなこと言うの、椎名(しいな)さんくらいしかいない。


一瞬後ろを振り向くと、予想通り椎名さんが冷たい瞳でわたしを睨んでいた。


椎名さんは、校内でも結構有名な派手系の美人タイプ。


見た目も派手だけど、恋愛関係もかなり派手みたいで、次々に色んな男子とつきあってる。


性格もワガママでキツイところがあるから、正直言ってわたしは苦手だ。


椎名さんもわたしのことをかなり嫌っているみたいだし。


実は椎名さん、高校に入ってから麻井先輩のこと狙ってたらしいんだけど、こんなごく普通のあまり目立たないわたしが先輩に告白されたってことが気に入らないらしい。



「気にすることないよ、紫苑」


「うん、ありがとう」


「でも、この前ちょっとウワサで聞いたんだけど……」


沙苗が急に真顔になって、少し声をひそめた。


「なに?」


「麻井先輩って、裏ではかなり女の子と遊んでるみたいだよ」


「……え?」


その言葉を聞いた瞬間、嫌な予感がした。


* * *


放課後。


「紫苑、今日はどうするの?」


「ごめん、先輩と一緒に帰るね」


「わかった。じゃ、また明日ね」


沙苗は笑顔でわたしに言うと、教室を出た。


沙苗にも好きな人ができたらいいな、なんて思いながら2年生の教室の廊下を歩いていると、


「それにしても、麻井もやるよなぁ。また新しい彼女できたんだろ?」


「ああ」


教室から、麻井先輩とその友達らしき人の声が聞こえてきた。


今「また新しい彼女ができた」って言ってた?


“また“ ってことは、前にも彼女がいたってこと?


先輩はモテるから、前につきあっていた人がいても全然おかしくないけど。


わたしは教室に入りづらくて、ドアの陰に立って話を聞いた。


「1年の子だよな。名前、何だっけ?」


「藤咲 紫苑って子だろ?うちの学年にその子のお姉さんがいるよな。姉の方はすごい美少女だけど」


「麻井、本気でつきあってるのか?」


「あ~、あれぶっちゃけバスケ部の試合で負けて罰ゲームでコクったんだよ。ホントはうちの学年の藤咲狙いだったけど、ガード堅いらしいから。とりあえず妹と接点あれば警戒されずに近づけるかなって思ってるだけ」


……!


一瞬、目の前が真っ暗になった。


先輩……今、なんて言ったの?


わたしには罰ゲームでコクった?


しかも、ホントはわたしじゃなくてお姉ちゃんの方を狙ってる?


ウソでしょ?


わたしの聞き間違いだよね?


「前から気になってたんだ」って言ってくれたのに。


あれはウソだったの?


そんな……そんなのってないよ!


「先輩、どういうことですか!?」


思わず先輩のいる教室に入って大きな声で怒鳴っていた。


「……!」


わたしの剣幕に先輩は一瞬ビックリしてたけど、すぐに開き直ったように平然とした顔で言った。


「どういうこともなにも、今言った通りだよ」


わたしはその言葉を聞いて初めて先輩の本性を知った。


沙苗が言ってたウワサは、本当のことだったんだ。


「ホントに今まで俺がおまえに惚れてると思ってたんだ?」


呆然と立ち尽くすわたしに、先輩はそう言って笑い出した。


「……!」


……ひどい! そんなこと言うなんて!


わたし、完全にバカにされてる……!


今目の前でわたしをあざ笑ってる先輩は、わたしの知ってる先輩じゃない。


知らなかった。知りたくなかった。


麻井先輩がこんな最低な人だなんて!


わたしは耐え切れずに教室を飛び出した。


――誰もいないところに行きたい。


そう思って着いたところは、学校の裏庭だった。


さっきの先輩の言葉がずっと頭の中で響いてる。


ひどいよ……!


わたしは本気で告白してくれたんだって思ってたのに。


ただの罰ゲームで、お姉ちゃんと近づくためだったなんて、信じられない!


サイテーだよ。


悔しい。あんな人だなんて知らずに見た目だけで判断して、告白されて嬉しくて簡単にOKしたなんて。


先輩の言葉が胸に突き刺さって、涙が溢れてくる。


どうしてあんなことが言えるの?


「うっ」


嗚咽がもれて、わたしは声をあげて泣いた。


時間を忘れてひたすら泣いて、ようやく落ち着いてきた時、


「藤咲さん?」


突然、誰かに名前を呼ばれて顔を上げると、目の前に葉月くんが立っていた。


――……?


なんだろう。こんなことが、前にもどこかであったような気がする。


一瞬、そんな不思議な気持ちになった。



「葉月くん、なんでここにいるの?」


「そうじ当番代わりに頼まれて、ごみ捨てに来たから」


「……そっか……」


わたしが力なく呟くと、


「何かあった?」


わたしの様子が少しおかしいことに気づいたのか、葉月くんが聞いてきた。


……どうしよう。


葉月くんとは知り合ったばかりなのに、こんな個人的な話をしたら迷惑じゃないかな?


それに、女の子の友達じゃなくて男子に恋愛の悩みを話すなんて、なんか恥ずかしい気がする。


あとで他の人に話を広められたりしたら嫌だし。


でも、今は自分の心の中にためこんでおくのは辛いし、誰かに聞いてほしい気持ちもあるんだ。


「……あの、言いたくないことなら無理して言わなくていいけど……」


色々考えて黙り込んだわたしに、葉月くんが言った。


「他の人には絶対に言わないでくれる?」


「うん、もちろん言わないよ。約束する」


わたしの言葉に真剣な表情できっぱりそう言ってくれたから、思い切って話すことにした。


「わたし、つきあってる人がいたんだけど……」


「うん。麻井先輩だよね?」


「そう。その麻井先輩、ただ罰ゲームでわたしにコクったんだって」


「……え……」


「わたし、バカだよね……。告白されたのなんて初めてだったから嬉しくて、相手のことよく知りもしないで、なんとなくいいなって思っただけでつきあってたんだ」


「…………」


「それに、先輩、ホントはわたしのお姉ちゃんを狙ってたんだって。サイテーだよね」


話してるうちに、また涙が溢れてきた。


「藤咲さん。麻井先輩は、多分本気で人を好きになったことがないからそんなことができるんじゃないかな。麻井先輩は藤咲さんに合う人じゃなかったんだよ」


黙ってわたしの話を聞いてくれていた葉月くんが、静かに言った。


「そうなのかな」


「うん。今度はもっと相手のこと知ってから自分に合うか考えればいいんじゃない?」


「……そうだね」


「藤咲さんがそんなに自分を責めることないと思うよ」


「ありがとう」


葉月くんの言葉と笑顔のおかげで、少し心が軽くなった。


思い切って話してみて良かった。



* * *



「なにそれ!? サイテーじゃない、麻井先輩!」


「沙苗、声大きい!」


「……あ、ごめん」


翌日の放課後、わたしと沙苗は学校の近くのファストフード店に寄った。


それで昨日のことを話したんだけど、沙苗もかなり怒っている。


「やっぱりウワサは本当だったんだね~」


「うん。でもウワサを知らない麻井先輩のファンは、みんなあの爽やかな笑顔に騙されてるんだよね。ホントにサイテーな人なんだから!」


「でも、そのあと葉月くんに励ましてもらったんでしょ?」


「うん。偶然会って話を聞いてもらったんだけど」


「羨ましいよ~。今や癒し系王子として大人気の葉月くんと仲がいいなんて」


「う~ん……仲がいいっていうほどでもないと思うけど」


「だけど、隣の席だから話す機会は他の子よりずっと多いよね」


「まぁね」


その後もガールズトークに花を咲かせてわたしたちは家に帰った。


* * *


「ただいま」


家に着いて玄関で靴を脱いでいると、お母さんが慌てた様子で玄関に来た。


「おかえり。待ってたのよ」


「何かあったの?」


「莉苑が、今日から入院することになったのよ」


いつもと違った少し暗い声になんとなく悪い予感がして尋ねると、真剣な表情でそんな答えが返って来た。


「……え? 莉苑ちゃんが?」


「検査したら結果があまり良くなくて、精神的なストレスが大きいんじゃないかって言われたんだけど。さっき入院手続きしてきたところなの」


「……そうなんだ」


莉苑ちゃんが入院なんて……。


確かに1学期の終わりくらいからあまり元気がないような感じだったけど、検査結果あまり良くなかったんだ。


「莉苑も、久しぶりの入院でちょっと心細くなってると思うのよ。だから、紫苑が会いに行ってくれたらと思って」


「うん、わかった。会いに行ってくるよ。いつもの病院だよね?」


「そうよ」


「じゃあ、今から行ってくるね」


わたしは荷物をお母さんに預けると、制服のまま病院へ向かった。



* * *


「入院するって聞いて、ホントにビックリしたよ~!」


莉苑ちゃんに会ったとたん、わたしはそう口にした。


「そうだよね。心配かけてごめんね」


「ううん。いつまで入院するか決まってるの?」


「まだ正確にはわからないけど、1ヶ月くらいかかるだろうって」


「そっか。でも、ひとり部屋だから落ち着けるね」


「うん」


莉苑ちゃんは小さい頃からこの病院に通っていて、長期入院も手術もこの病院でしているんだ。


「早く元気になってね。わたしも来られるときはなるべく来るから」


「ありがとう」


それからしばらく莉苑ちゃんと話をして、また来ることを約束して病室を出た。


莉苑ちゃん、見た目では全然悪くなってるようには見えないし、普通に話もできるのに。


精神的なストレスが大きいってことは、何か辛いことがあったのかな。


早く良くなるといいけど。


そんなことを思いながら病院を出ようとしたら、見覚えのある人を見かけた。


「葉月くん?」


「藤咲さん?」


お互いに気づいてビックリ。


まさか病院で会うなんて思ってもなかった。


でも病院に来ているってことは、もしかして葉月くんもどこか具合が悪いのかな?


「葉月くん、どこか具合悪いの?」


「実は、小さい頃に体が弱くて、通院とか入院してたんだ。それで今でも定期的に検査したり薬もらったりしてるから」


葉月くんの話を聞いて、驚いた。


体が弱かったっていうことを初めて聞いたっていうのもあるけど、莉苑ちゃんと似たような境遇だって思ったから。


「そうなんだ。実はわたしのお姉ちゃんも小さい頃から体が弱くて、この病院にお世話になってるの。今日は、また入院することになったから、会いに来てたんだ」


なんとなく親近感がわいて、思わずそう話していた。


「もしかして藤咲さんのお姉さんの名前って、“りおん”さん?」


葉月くんが何かを思い出したように言った。


「そうだけど、どうして知ってるの?」


お姉ちゃんがいることは話したけど、名前までは言ってなかったはず。


「夏休み中にこの街に引っ越してきて、この病院にも何度か来たんだけど、その時に見かけてたんだ」


「そうだったんだ」


転入してきて隣の席になった人が実は自分の姉妹に会っていて、しかも小さい頃から体が弱かったっていう共通点があるなんて……なんだかただの偶然じゃないような気がする。


実は、葉月くんとはもっと運命的なつながりがあったんだけど……それを知るのはまだもう少し先のこと――。