「あの病院は俺の父が理事長で、俺はよく院内をふらついてたんだ。」
御堂は遠い日を思い出すかのように空を仰いだ。
「あの時は、いつか俺もここで働くんだって、毎日うきうきしてたんだ。」
そう空を見上げる御堂は切なげで、凛は息が詰まった。
「だけど、大野さんとの約束を果たすことはできなかった。俺が自分の弱さや甘さから逃げてしまったから。」
今にも泣き出しそうな御堂の声に、凛はさらに胸が痛くなった。
「…ごめんね、あの日大野さんとした約束を、果たすことができなくて。」
潤んだ目で凛を見つめる御堂に、凛は「そんな…!」と口を開いた。
そんな昔した約束なんて、どうでも良かった。
そんな治療があったってなくたって、あの時傷ごと愛してくれるっていう言葉に何度も助けられたんだ。
先生に言われるまでそんな約束をしたことを忘れてたくらいだ。
だけど、それなのに、
先生は真面目で誠実だから、何年も前に交わした約束のことを今も気に病んで泣きそうになってるんだ。
…どれだけまっすぐな人なんだ。
そんな御堂を愛おしく感じて、凛はふっと笑った。
