「嘘だ…。」
凛が出て行った後の教科室で、御堂はぽつりと呟いた。
その言葉が漏れたのは凛が突然出て行ってしまったわけでも、傷を見たからでもない。
あれは…完全に俺だ。
凛がいう忘れられない人が過去の自分だったからだ。
最悪だ。
あの時、屋上で今にも泣き出しそうな女の子を励ましたのは、高校入学前の俺で、
医者になるんだと信じて疑わなかった俺で、
だから彼女と『傷を綺麗にする治療を見つける』なんて、無責任に約束をしてしまったんだ。
彼女が10年も探している少年が、医者になる道から逃げて、教師になった俺だと知ったら、彼女はどう思うんだろう。
…いや、金輪際話してもらえなくなるかもな。
御堂はそう自嘲すると、あまりの絶望に吐きそうになった。
