オンラインゲーム『ラピスラズリ』


自分の部屋に何とか辿り着き、ベッドで泣き崩れ、いつのまにか寝ていた。
意識の遠くで、バイオリンの優しい音に呼ばれるように目を開ける。
身を起こし、PCに近づくと電源が入っていて、『独創サイト』なのか画面中央で光を浴び、バイオリンを弾いているタクマ。
同じ学校の制服。1曲が終ると違う曲を続けて演奏する。
まるで、私の為だけに演奏されるコンサート。
癒されるような音に耳を澄まして、机に響く音を感じる。
出尽くしたと思った涙が、自然と頬を伝う。
悲しみとは違う、安堵の伴った無意識のもの。
その涙を拭いながら、笑みがもれ、止まらないのに心は満ちていく。
染み込むような音に、また、私は惹かれるんだ。
彼に会いたい。

急に無音になったので、画面に目を向けた。
すると、PCの前に居る私に微笑みを見せるタクマ。
そして演奏開始。それは……愛の歌……
何故、その曲なのか。私は何を望み、何に囚われたのか……
その曲に、不思議と嫌な気分を抱くことなく、自分の想いが不快だという感覚もなく、聞き入る。
貴方について何も知らないのに。

愛の曲は、バイオリンの深い音が想いを増幅させるようで、何とも言えない。
言い表せない感情が、芽生えるような……夢心地。
いっそのこと、この幻想の彼を好きでいれば傷つかないだろうか。
会わないで良かったのかもしれない。
戦士アジュール、タクマの大切な人が誰だったのか、知らないままで。その方が楽でいい。
エンディングは、ヒロインとして演じきった私のもの。それで十分、生きていける。
晴の事は、今は考えない。
闇に逃げようとする私を、光に導くのは貴方なのね……

演奏を終えたタクマは画面に3つのフォルダーを表示した。
『預かったメモ』『アジュールとヒロイン』『無音』
そして、タクマは悲しそうな声で説明を始める。
「未來、君をヒロインに選んだのは、接触が欲しかったから。君は現実で、俺に無音を刻んだ……2度も。偶然と、必然の様なタイミングで運命かと思うほどだよ。何から語ればいいのか、会う約束をしてから、ずっとその事だけが思考を占拠した。何があったのか、あの部屋から相月くんが出て行くのを見た時に理解した。」
入れ違い。良かった、晴に抱きしめられている所を見られなくて。
誤解されたくない。もう、私の想いは変わったのだから。
「今、俺は後悔している。運命の歯車を狂わせたのは、俺だろうから……」
え?タクマの言っている意味が分からない。
「この3つのフォルダーを、見るのも見ないのも、未來の決定に委ねるね。ごめん。」