窓際にいる私に、近づいた晴が手を伸ばして触れようとするので咄嗟に払い除けた。
触れて欲しくないと、強い感情が怒りのように激しく燃える。
睨んだ私が信じられないのか、戸惑い、状況が把握できないような反応を返す。
晴は払われた手を握り締め、視線を一度逸らして戻し、歩を進めて私を抱きしめる。
男性の強い力。
「……っ、放して……」
私の体に伝わる晴の熱。
必死で抵抗をするけど、晴の力は強くて逃げられない。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ……~っ、我慢が出来ない。
「私に、触らないで!」
私の声に、晴の体が反応した。
視線を向けると、抱きしめていた両手が下がり、悲しそうな表情で訴える。
晴から視線を逸らし、避けて距離をとる。
私は、タクマとの最後になる接触の道を閉ざすことになるのを覚悟で、その教室を出た。
目から涙が溢れて零れ、流れ続ける。
全速力で走って、息苦しさに足を止め、壁に寄り掛かって声を殺す。
「……っ。ふっ……ケホッ……ッ……うっ……ぅ……」
歯を食いしばるのに、走った息苦しさと、涙につられた声が入り雑ざる。
目に手の甲を当て、涙を拭いながら、霞む視界に周りも見えず、家に帰ることを望んだ。
震える手で壁を押し、不安定な足取りを感じながら……
帰りたい。こんな無様な姿を、これ以上晒したくないと……
見ないで欲しい。違う……違う、違う……違うの。そうじゃない……
晴、私に触らないで。あなたの手は…………汚い……
音が雑ざる……雑音のように、心をかき乱す……
……不協和音

