オンラインゲーム『ラピスラズリ』


タクマは剣をブルードラゴンの腹部に刺したまま、そこから後ろ向きで飛び降りた。
「装備の色が違うし、髪型が違うから気づかなかったけど、アレ……」
「だよな?」
観客のざわめきが音声で耳に入り、画面に文字が増えていく。
「消えたんじゃなく消されたのか?」
「白鉄で統一された装備と、腰まである銀髪の女戦士……」
一瞬の静寂の後、声が重なった。
「アジュール。」
その言葉を遮るように、ブルードラゴンは機械音を何度も放つ。
「操作、しやがったな?」
憎しみのこもった声音。
「都合の悪い事を知られるのが、そんなに恐ろしいのか?……今度は、お前を永遠に葬ってやる。」
勇者アジュール……女性なのかな……何だろう、この胸の違和感。
締め付け、抉られるような……表現できない痛み。
私は画像を見つめ、胸元の服を握り締めて押さえ付けた。
しっかりしなきゃ。私は、タクマが選んだヒロイン……なのだから。
誰かの代わりだとしても、今、タクマと共闘しているのは私。
戦いに集中して、彼を援護しよう。
目を真っ直ぐに、画面を見つめて動向を見守る。

ブルードラゴンの腹部に刺さった、剣による傷から漏れていた黒い霧状の物が徐々に少なくなって止まった。
「くくっ、あはははははは!この世界は俺の物だ。同じ手は、喰わない……そんな防御しかできないような奴を連れて来て、何の役に立つ?」
ブルードラゴンの視線は私に向けられ、先ほどとは違う胸の痛みを感じた。
鋭い刃が刺さったような衝撃。
精神攻撃に、頽(くずお)れてしまいそうだ。
自分が出来る事さえ理解していない私に援護できるの?
彼が促すキーを押すだけ……
『ヒロインの助けがないと、この世界に平和は訪れない。点滅するキーを押して欲しい。それまでは何にも触れず……待っていて欲しい。例え、俺が死んだとしても。』

ブルードラゴンはタクマの方に向いて静止し、足元に魔方陣が広がる。
そして口を徐々に大きく開き、その中に渦巻くような何かが膨らんでいく。
その大きさに伴い、耳鳴りの様な音が大きくなって止まった。
画面に浮かんだ新たな文字の点滅『3あ#』。
私は細心の注意を払いながら押した。
「イェシルクト!」
これも……防御。