二人は、新たに開かれた扉を通る。
PC画面は、移動を暗示させるような異空間に浮かぶ二人を呑み込んで、眩い光を放った。
目が慣れ始めると、画面に映し出された光景に驚く。
それは城の中ではなく、天井のない円形闘技場だった。
観客席に居るのは、橋の前にいた人たち。選ばれた罵声と、画面に罵りの言葉の羅列。
やがて、それは同じ言葉で不気味に響く。
「殺せ。」と……
嫌悪する。野次る声と、画像なのに伝わる異様な空気。
タクマは私に近づき、微笑をみせた。
「共に、闘ってくれますか?」
音声と同時で画面に、『はい・いいえ』が浮かぶ。
その瞬間に、雑音は消え……無音。
私はマウスで『はい』を選択した。ここまで来て迷いはない。
画像の右下に、Shift・3あ#・1ぬ!・4う$。4つの選択項目が現れた。
「ヒロインの助けがないと、この世界に平和は訪れない。点滅するキーを押して欲しい。それまでは何にも触れず……待っていて欲しいんだ。例え、俺が死んだとしても。」
画面の中央にEnterキーを促す点滅文字。暗い画面に映える黄色の光が目立つ。
エンターキーを押したと同時に、タクマは背を向けた。
『俺が死んだとしても』……
中央の画像が大きく揺らいで、徐々に鮮明になっていく。
音は、不穏なメロディで戦闘をイメージさせた。
見たことのない大きなブルードラゴン。
この世界に、紺碧の装備が存在しない理由…………
機械音の様な叫び声を上げ、空に放つ黒煙。
敵は腕を振り上げ、鋭い爪でタクマに襲い掛かった。
攻撃をかわしたタクマに、時間差の疾風が打撃を与える。
ラスボスに勝てる要素がないような印象。
それは、私がゲームに関して素人だからだろうか?
『俺が死んだとしても』
ずっと同じ言葉が頭に浮かぶ。
私が出来る事は何だろうか。予測されるタクマの戦闘不能時……
『共に、闘ってくれますか?』
共に……共闘……今、私は傍観者。
『待っていて欲しい』
それは、いつまで?
私が今まで見たことがなかったゲームの世界は、リアルな効果音と鮮明な画像。
まるで、そこに自分がいるようだ。
ブルードラゴンとタクマの攻撃と防衛が繰り返される。
その攻防を外観する人たちは、何を考えるの?

