「トスフォルスィマホン!」
女の子の声が聞こえたのと同時でシンバル音が響き、視線をPCに向けるとアバターが変化を始めた。
タンバリンを持った手を掲げ、揺らして奏でるシンバル。
それが揺れる度に、紺碧の光がキラキラと小雨のように降り注ぐ。
足元に紺碧の魔方陣が広がり、そこから生じる風に漆黒の髪が舞う。
紺碧の光を吸収し、長い髪は漆黒から紺碧に染まった。
足元の魔方陣から生じる白青の煙が、風に舞うようにゆっくりと身体を包んでいく。
宙に浮き、白いロングブーツが艶のある武装用に変換。
バルーンスカートは巻きスカートのような形態に変化して、中はキュロット。
上半身には、背当てのない心臓を守るための胸当て。
腰にあった大きなリボンは解けて、しっかりとした帯が交替して着衣を締めつける。
そして解けたリボンは肩に移動して、留め金を起点に風に揺れて広がるマント。
両手の白いロング手袋は、手の甲や腕を守るための防具へと変化を遂げる。
すべての装備が整い、紺碧の色で統一された。
そう……この色はここに存在しない物。
その世界を作り出した者にとって、特異な色は、自分の意図したものではない。
とても目障りで、不愉快な物でしかないだろう。
角度が変化し、天井部分が映し出される。
そこには無数の刃の光……効果音と共に降り注ぎ始めた。
今度は、バイオリンの高音で癒すような曲が流れ、音符が舞い始める。
点滅する文字がPC画面に。『Shift』
シフトキー!私は即座に反応して、押した。
「プロスヒェルテン!」
声と連動して、視界を奪うような光が私とタクマを覆う。
私の足元には魔方陣……傘のような防壁。降り注ぐ刃を、ことごとく打ち砕く。
そして画面上に飛び交っていた音符が、見えない壁を崩した。
砦は呆気なく崩れ去って、城の全貌を見せる。
防壁は消え、城を背景に……タクマのキス。
アバターの私に。両手を頬に添え、唇を重ね……無音…………
それはまるで、ヒーローとヒロインのラブシーン。

