『連なる日を跨ぐ夜。城への扉を開く。難攻不落を誇る我が砦に、挑戦するが良い。』
自ら難攻不落を誇る砦を、攻略してみろとの挑戦を受けた。
連なる日、この連休を跨ぐ夜。
土曜日から日曜か、日曜から月曜の日付が変わる時間に、城への扉が開かれる。
私はタクマとの約束で、土曜日の23時50分にPCを立ち上げた。
タクマは、私を試しているのだろうか。
懐かしい普通の画面からインターネットに接続して、お気に入りから『独創サイト』にログインした。
画像選択の一覧に、何らかの変化があるかと確認したけど、それらしき物はない。
私は、ヒロインに相応しい『光』を選択した。
画面の中央から、渦巻くように光と闇のグラデーション。
徐々に光の面積が増え、一面の白い世界にアバターが立つ。
私に面して真っ直ぐな視線。
両手の平を上にしてゆっくり左右に広げ、右手に『ヒロインを続ける』左手に『ヒロインを辞める』その文字が交互に点滅して選択を促す。
私はマウスで『ヒロインを続ける』をクリックした。
すると選択しなかった文字は黒い音符に変化。
バイオリンの穏やかな曲が流れ、音符がアバターに触れて衣装が変わる。
以前に変身した白い戦闘服……手には、胴の部分が紺碧のタンバリン。
それを腰の部分に提げ、ポーズを決めた。
どこか気恥ずかしさもありながら、これから向かう世界にドキドキとワクワク。
そして、待ち構える罵声……きっと、タクマに対する悪意。
画像が揺れ、形を成し、武装したタクマのアバターが出現する。
あの世界で『アズライト』と呼ばれる所以の、紺碧で統一された鎧は存在しない色だと言っていた。
私は以前、この姿でチャットに侵入したことがある。
設定にはない事、在り得ない状況だった。それを作り出したのはタクマ。
うん……大丈夫、信じることが出来る。
あの行為は、見知らぬ誰かの救いになったのだから。
このゲームでの行為も、きっと、誰かの為だと思いたい。
私に求める『ヒロイン』も、必要なんだ……それは……“私”ではなくても、良かったのかな?
タクマは誰かが『ヒロイン』になってくれる状況を必要とし、都合よく現れた私。
晴のメッセージと引き換えに……?
何かが腑に落ちない。
タクマは、私に説明をしない……それは、すべてが終わった後なのかな。
彼は必ず対面すると約束をしたのだから、私は、その時を信じて待とう。
タクマは私に手を差し伸べる。
矢印キーを押して、タクマの方向へとアバターを移動させた。
手を取った瞬間、曲は途中なのにバイオリンの音は途切れる。
無音…………

