オンラインゲーム『ラピスラズリ』


待っていた友達が手を振って、私に合図した。
走って戻った私の手にしていたのが炭酸なので、友達は理由を尋ねる。
普段、私は炭酸を飲まない。
飲めない事はないのだけど、苦手というか、空気の上がってくる感じが嫌いだった。
ペットボトルを開けると、走ったにしては別に害もなく、少し冷めたたこ焼きを二人で分け合う。
「お昼は混むだろうし、お腹は満たせて良かったんじゃない?」
「そうだよね。でも、消化するために動きますか!」
私たちは、勢いを付けて立ち上がった。

エスカレーターに乗り、二階へと移動する。
梅雨や夏を意識した仕様に、少し早い季節感を味わう。
節電を意識したクールビズ商品は、種類が豊富で、機能的でオシャレ。
スリッパ、クッションなど雑貨も溢れる。手に取って感触を確かめ、友達と楽しむ。
その一方で浮遊する意識。心、ここにあらず……。
それでも、お腹は、自然に欲求を素直に訴える。
友達も同じなのか、時計を見て私に問う。
「レストラン街へ行かない?」
私たちは遅めの昼食の為、三階にあるレストラン街へ向かった。
エスカレーターに乗って、友達は私の前に立ち、前方を見つめる後姿。
私は流れていく階下を眺める。
どこか現実で、夢のような光景。多くの人がいて、それは家族や夫婦、恋人や友達。
子供が人波を駆け巡り……気づけばエスカレーター終点。

目を前に向けると、友達が後ろに居た私の方に向き、私の手を取って走りだした。
突然の行動に、視線を前にして慌てて付いて行くのに必死。
友達が立ち止まったのは、最奥のうどん屋さんだった。
手を握ったまま、振り返った友達は息を切らして私に微笑む。
「お腹、減ったね。ここ、美味しそうだと前から思っていたんだけど、親と一緒に来たときには入らないから……駄目かな?」
「ううん、入ろう!」
お昼のピークを過ぎ、最奥の店だからか、お客さんは疎らだった。
メニューを確認して、お財布と相談。
少しリッチに天ぷらうどんを注文した。友達は、きつねうどん。
注文を終え、待ち時間に友達が買ったものを机に広げる。
雑貨屋で見つけた学校でも使えそうな暑さ対策の小物。
私も可愛いから買うか迷って、止めて後悔。
……どうせなら、行動して後悔したい。

注文したアツアツのうどんが到着し、机の上を慌てて片付ける私たち。
無理して高い天ぷらうどんを注文して、満足感と謎の優越感。
友達と分け合い、楽しい時間を過ごす。
満腹で会計を済ませ、階を下り、今度は服を見て回る。
可愛い服を見つけ、身に当てながら友達に尋ねる。
「ど?」
友達は、私の上から下まで眺めて、首を傾げた。
「ちょっと待って、遠くから見てみるから。」
そう言って少し私から離れ、友達は手を口に当てて考える仕草。
それに笑みが漏れ、ふと、人波にいるカップルに視線を奪われた。晴と木口さん……
あぁ、あの時二人を見つけたんだね。
友達が私の近くに戻り、視線も自然と移ろう。

友達の気遣いに、二人を見た動揺など感じず……理解する。
私は、確かに恋を失った。だけど、失恋の悲しみや痛みが無いのは、無感覚になったのではない。
私の初恋は、終わっていたんだ…………