オンラインゲーム『ラピスラズリ』


朝、目覚めているようで夢心地。
いつものように着替えて、朝食を食べ、学校へと向かう。

道中、頭にあるのは、あの世界。
闇に煌めく光、音符の流れに合わせて奏でる曲。
バイオリンの高音にシンバル音が響き、心地よい感覚に、夢のような物語を反芻する。
もっと楽しい事が、きっとある。
望んだ期待を裏切らないタクマ。

学校の門を通り抜け、遠くに響くバイオリンの高音に耳を澄まし、足を止めて空を見上げた。
太陽が流れる雲に隠れ、光が途切れる一時。
遮る物が無くなると、光が注がれる。
目を地面に落とすと、出来た自分の影に重なる人影。
「おはよう。」
聞き覚えのある声に、距離を取るように移動しながら挨拶を返す。
「おはよう、晴。」
視線を真っ直ぐ向け、晴の視線と合う。
晴の隣には木口さんが居ない。彼女は、どうしたのだろうか。
この時間は、晴と登校していた時間ではない。
あぁ、そうか。もう数か月、生活のパターンも変わってしまうほど、晴の日常は変わったんだ。
見つめ続けながら、頭の中は別の事を考えていた私に、晴は悲しそうな表情を見せる。
「未來。君は、俺のメモを見なかったんだね。」
…………
思考の大半を占めていた世界はネット上のこと。
夢から覚めるように、現実を突き付けられ、心に重く圧し掛かる言葉。
圧迫は重く、闇に落ちる様に沈む精神。

言い終えた晴は、後から来た彼女と歩いて校舎へと向かう。
私は、また……彼らの後姿を見つめる。
足取りは不安定で、視界は霞む。
これが現実……逃避……

私は逃げる事に慣れてしまった。
『メモを見なかったんだね』
晴は私に、メモを見て欲しかったの?
ヌイグルミに仕込んで、私に分からないような形で渡し、数か月も確認せずに。
晴自身は、私を置いて、どんどん進んでいくのに。
取り残された私は、どうすればいい?
『メモ』今更見たところで、何かが変わるの?後悔する?
晴…………