ドキドキとワクワクに、心は支配される。
難攻不落の城も、もしかすると攻略できるかもしれない。
きっと……この人と一緒なら、私は『ヒロイン』になれる。
エンターキーを、バイオリンの流れる軽快な音に合わせて押した。
私はタクマの手を取り、互いに微笑みながら、足元の闇に映し出されたゲームの世界に呑み込まれる。
闇に螺旋の光が刻み、時空を移動しているような画像に、無音。
一瞬の光が画面を真っ白にする。
眩しさに目を閉じ、そっと目を開けると別世界にいた。
私(アバター)を光が包んで、少し宙に浮いているようだ。
高画質の中世的な街並みは、タイム・スリップをしたように感じる。
古都に活気があふれ、行き交う人の賑わう声。
周りにいた人が私をすり抜け、何事も無かった様に通り過ぎていく。
ここでも傍観者なのだろうか。
タクマと逸れたのかな?
オンラインゲームなんてしたことが無い初心者は、それこそ囚われのヒロインが丁度いいのかも。
でも、この状況は……?
画面を見つめていると、周りの人の視線が一点に集中する。
「アズライトだ!」
画面いっぱいに、“アズライト”の文字と会話文が飛び交う。
注目の的になっているのは、鎧を纏ったタクマ。
紺碧に統一された装備が、名の意味を告げる。
私に近づくタクマの後ろから、一人が接触した。
「場違いなラピスラズリ。この世界に、その装備は存在しない。出て行け!」
街中なのに、戦闘モードで画像が激変した。
画面には、人から獣に変化した敵がタクマに襲い掛かる。
タクマは鞘に入ったままの剣を振るい、防御した。
敵はスルリと避け、距離をとって攻撃態勢を整える。
その間にタクマは鞘を腰に戻し、剣を抜いて地面に突き刺す。
目を閉じ、小さな声で聞き取れない呪文の様な詠唱。
剣が突き刺さったところを中心に魔方陣が広がる。
高画質で、高い耳鳴りのような音が響く。
まるで自分が、そこに居る様な感覚。
心は引き込まれ、視線を逸らすことも出来ず、瞬きさえ忘れるほどに。
魔方陣は煙のように形を変え、剣に纏わり白青の炎に変化した。
再び襲い掛かる獣に、タクマは諸手突きの攻撃。
白青の炎が光線のような速度で、獣に喰らいつく。
激しい火炎音…………

