オンラインゲーム『ラピスラズリ』


朝起きて着替え、机の上のPCを見つめる。
電源off状態の画面は漆黒の闇色。
そして、その隣に置いた雪だるまのヌイグルミ。
彼が私に求めるのは、一時的な『ヒロイン』。ネット上の係わり。
ゲームのような事件解決も、都合のいい物語。
先の見えない事も、彼は把握の上で、私(アバター)を動かす。
私は囚われの傍観者。
共有するのは何だろうか。私がヒロインなら、彼はヒーロー。
本当の目的も分からないのに、このまま共に時間を過ごすことを億劫だとは感じない。
何故、私だったのか……
ただ、あの日……このヌイグルミを手に入れ、晴からのメッセージを見たのだろう。
取引の材料になると判断できる内容だったのだろうか。
疑問は増える一方。

彼のヒロインになれば、晴からのメッセージを渡すために対面すると約束した。
それを信じ、彼について調べるのを控えようと思う。
保健室へ行けば、あのサイトを先生に勧めた生徒が分かるだろう。
その生徒が、“彼”の可能性もある。
情報を知っている生徒か、全く知らない可能性も否定できない。
調べる行為を知られたら……それは、信頼を裏切ることにならないだろうか。
証拠などない。最悪な場合は知らないと言われ、ネットでの係わりを絶たれるなら、晴のメッセージは手に入らない。
私は囚われを選んだ。
それでも、バイオリンの高音が聴こえる度に、反応する心音。無意識に早くなる足。
何に囚われたのかな。彼の存在が、私の中を占めていく。

失恋の痛みが癒されたのか、心が無感覚になったのか、それも理解できない。
晴のメッセージの内容が分からない限り、私の中で時間は止まったまま。
晴の時間は、どうだろう。
木口さんと付き合い、二人で過ごす時間は私の時と同じだろうか。
きっと、幼馴染と彼女では違いがあるだろう。
おかしいな、心に痛みが生じない。
思い出すのは、あの言葉。
『未來、見てくれた?』
見たか、どうかの確認。
それに即答せず、私の反応は答えになったのだろうか。
晴には、今の状況を伝えた方がいいのかな。
あれから数か月……晴は私に、見た確認をしなかった。どうしてだろう。
私が見ていないと伝えれば、晴から内容を聞くことが出来るかもしれない。