決まった時間にログアウトしていたからか、いつも寝ている時間が近づくと、ログアウトを促す選択画面へと切り替わった。
明日、学校があるのは“彼”も同じ。
声がサイト関係者のものであるなら、同じ年代の男の子。
年上か、同い年……多分、年上ではない気がする。
ヌイグルミを落とした階段は、同学年の使用する道だから。
夢を見る。
それは、音のある世界。
高音のバイオリンが心に沁みるような音。
揺れる水面をイメージする闇が足元に漂う。
自分の位置するのが光で、望んだ闇に入るのを戸惑う恐怖。
矛盾した自分が理解できなくて、ただ立ち尽くした。
注がれる光に目を開けると、朝日なのだと理解する。
部屋は静かで、時計の秒針の音が響いた。
机の上には、雪だるまのヌイグルミ。
それを手に取り、あの日と同様……抱きしめる。
あの時、力が入らなくて、悲しみと動揺と、震える声が記憶にある。
晴は、私に背を向けた。
その時、いつもの笑顔ではないけれど、微笑んだような気がする。
幼馴染。幼い時から、一緒に遊んだ。時に集団で、家族と一緒に出掛けたこともある。
手をつなぎ、微笑み、喧嘩をして、叩いて、謝り……そんな事を何度も繰り返した。
それでも周りの評価は仲良し。
どこで変わった?
私の幼い恋心が、周りに分かるほどだったとすれば、晴に迷惑を掛けたのかな?
それとも、私なんか目に入らないほど木口さんに恋をした?
付き合う様になって月日が過ぎた。私には分からない事。
晴の通学時間も把握済み。それを避ければ、確実に会うことはない。
この間、階段で会うなんて……珍しい事。
そうだよね、私が知っているのは晴の行動パターン。
木口さんの事など知らない。
……“彼”は、私の事を、どれほど知っているのだろうか。
就寝時間と、入力した個人情報。そして、あの日の出来事。ほんの少しの情報。
彼の望んだのは一時的な“ヒロイン”。
「未來?今日も考え事を、ずっとしているみたいだけど、また熱が出るよ。」
冷たい手が額に触れ、覗き込むような視線の晴。
目の前にある光景に、頭が真っ白になった。
思わず身を引いて、触れている手から距離を取る。
「大丈夫!ありがとう、ごめんね。」
周りを見て、自分の状況を確認。
気が付けば、昼食も終え、掃除時間で外に居た。
いつのまにか持っていたホウキを、晴が片付けてくれる。
皆で教室に戻る数人の後姿を見ながら、晴の隣を歩いた。
戸惑う。昔から、常に長い時間一緒にいた。自分の場所だった所が、むず痒いような恥ずかしさで居心地悪い。
久々だからではなく、居るべき場所ではないから。

