オンラインゲーム『ラピスラズリ』


アバターは光の中、目を閉じて動かない。
正確には、動けない束縛状態。
黒い紐状の何かに縛られ、磔(はりつけ)……
刑を受けているような、その姿こそ闇に相応しいのではないだろうか。
なのに、光の注ぐ中央で、彼女は私の選択の結果……囚われの身。
吐き気の催す光景に、思わず、PCの電源を切った。
震えて、思考停止。


親は、青ざめた私に、学校を休むように勧めた。
PCから逃げるように、身支度を整えて部屋から出る。
食欲なく、重い足取りで、学校へと向かった。
カバンには、雪だるまのヌイグルミが入ったまま。
これは、関係するのだろうか。
ヌイグルミの返却で、私とアバターへの接触。
偶然なのだろうか。あのバグは、私だけなのかな。

保健室へと足を向ける。
朝の早い時間、その部屋は鍵の掛かった状態で、先生が来るのを待つしかなかった。
ドアに背を預け、廊下にしゃがみ込むと、冷たい風が通る。
体調が悪いのが、悪化するだろうか。
目を上げると、外の木々は、桜が散って葉が青々と茂っている。
光の漏れる木は、風で緩やかに揺れた。
耳には、小さな音……
高音のバイオリン。
PCのスピーカーより鮮明で、遠くから聴こえるのに、心に響く。
立ち上がり、耳を澄ました。
確かに、聞こえる。保健室の中じゃない。
闇雲に走り、ほんの少し近づいた音は途切れ、学校のチャイムが道を閉ざす。

立ち止まり、息を切らして汗を拭った。
居るんだ、この学校に……あの、サイトの関係者が。
私のアバターを救わないといけない。
『俺のヒロイン』?
理由は分からない。
私にヌイグルミを返し、その中にあった何かを持っている。
きっと、彼の望みと引き換えに手に入れることが出来るはず。

私はバイオリンの音に耳を傾け、探して、見つけ出す。
アバターは私。
彼に囚われた私は……逃げ道を探す…………