「な、なんだ。なんで殴る。」
「うるせえ。はぁ……妹が死んだ。」
「……ミイロちゃんが。」
俺の妹、海色(みいろ)はコイツの事が好きだった。
そしてコイツ、楽水(ささな)も。
二人の想いは知っていたけど、俺は許さなかった。
お互いの気持ちを知らないまま。
まさかゲームで出会っていたなんて。
楽水(ささな)は頭が良い。察しもいい。
ただ中身が幼稚すぎる。純粋だと言えば聞こえはいいが。
「まさか。」
「アジュールはミイロだ。」
残酷な事を告げている自覚はある。
それでも腹を殴ったくらいじゃ治まらない怒りもある。
コイツからの怒りも当然だろう。
「お前が、許さないとか言うから。」
激情型。
お前の言っている事は正しい。確かにそうだけど。
自分が何を発言して、どう行動しているか。そこを顧みない。
「当たり前だろ。ミイロとやりたいなんて言うやつに、兄として許せるわけがない。俺に言うな、黙って告れ!」
そう。やりたいなんて、男なら当然思うわけで。
それを素直に俺に言いやがる。
下手すれば。学生のミイロに好きとか言うのをすっ飛ばして、コイツは自分の願望を言いそうだった。
惚れたミイロが告白もなく、ただ求めに応じそうで。
それも危惧して。
これは俺が悪いのか?
何かできたのだろうけど。
あぁ、もうミイロが死んでしまってからでは遅い。
そうだよな。中身を好きになったんだ。
どこで、どんな姿だろうが。出会えば好きになるだろう。
サピオセクシャル。
面白い言葉の言い回しや、知的な会話。相手の知性・所作や発言に魅力を感じる。
たとえ、頭の中は欲望が満ちていても。
俺からしても、コイツは面白い。
頭が良いのは前提で、極力言葉を使わない。
どこか自分の言葉が伝わらないと思って自信がなく。
だから直情的になるのだろうか。
俺の言葉も増やさなくていい。感情も察するから。
けれど、肝心なところが鈍感で恋に疎い。
おかしいなあ。成績もよくて、学生時代はサッカー部。優勝経験もあると聞いた。
ジャニーズ系ではないけれど。顔は濃い系。整ってはいる。肌も綺麗で。
モテたはずだぞ。
まぁ、やりたいとか下ネタがなぁ。残念な要素。損をしている。
今だって何も説明しなくても、コイツの頭の中で情報が整理されている。
地面に座り込んで落ち込んでいるコイツを見ていると、俺も複雑だ。
病院の特別な個室。父親が設置した監視カメラ。
『リアルで会いたい』
無理だな。もう長くないのを分かっていたアイツが、お前と会うなど望みはしないさ。
会わなくてよかった。
ミイロの初恋、あきらめて好きになったのもお前なんて。
残酷すぎる。

