駄目だ、これはゲーム。
ゲームなのに。
このゲームに課金は存在しない。
ゲームのクリアができずアカウントを奪われた人たち。
これは個人所有の精巧なゲーム。無料で提供されたもの。
データが破損しても文句は言えない規約。
けれどゲーム内の会話は。運営の管理下にあるとはいえ、個人的なもの。
それを。
文字を打とうとしたけれど、どこにも表示されず。
おかしな点は、もう一つ。
ボスに挑んだ場合、この闘技場は世界の空に実況中継がなされ。
この観覧席を埋め尽くすほどの観覧希望者がいるはず。
「姿はアジュール。どうせなら女性のアバターで会って欲しかったよ。まぁ。もう命の尽きるかわいそうなヒロイン。だから君に教えてあげよう。君はこれから私に吸収されるのだ。二度とこの世界に戻れない。いつか、カプリチオも吸収される。それがこのゲーム。【難攻不落の城エターナル】。このゲームを楽しみ時間を費やして。強くなって、この無敵のラピスラズリに挑み。それがすべて糧となるのだ。無敵無敵無敵。このゲームを終わらせない。それを楽しむのが俺だ。さて、私も情けがないわけじゃない。占いの結果を教えてあげよう。心配しなくていい。これは統計に基づくその筋で有名な人の予言。今から表示される文章は俺も知らない。読み終わった頃に、すべてが終わる。リアルの君の寿命は知らないけれど。」
画面には中央から水が沸いて波紋が拡がり。
黒い文字が浮かんで単語ごとに音読されていく。
『未来 に 繋ぐ』
すると次の瞬間には画面がグシャっと握りつぶされたようになり。
茫然と見つめる画面に映し出されるのは、間近に迫ったラピスラズリ色のドラゴンの顔。
口がゆっくり開いて。
一気に近づいたと思ったら画面は暗闇。
装備された鎧が歪む音。
骨が砕かれる音と共に、呻くような叫び声。
画面には血しぶきが拡がり。
それは。
ゲームのアバター。アジュールの死。
「……っ。はぁ……誰か、助けて……お願い、アジュールを。カプリチオ…………」
意識が遠退き。
それはリアルの私の死。

