触れられない手

「……」

朝陽は、
店には入らず、
外から一瞬だけ見て、背を向けた。

会えば、
また同じことを繰り返す。

壊して、
誰かを失う。

それが、怖かった。



夜。

アパートに戻る途中、
朝陽は立ち止まった。

柚香の部屋の明かりが、
消えている。

それを確認してから、
自分の部屋に戻る。

近づかない。

それが、
自分にできる唯一の正解だと思っていた。