触れられない手

翌日、
学校は何事もなかったみたいに始まった。

チャイム。
ざわつく教室。

私は、朝陽を見なかった。
見ないって、決めた。

席は近いのに、
存在だけが遠い。

朝陽は、いつも通りだった。

クラスの女子と話して、
軽く笑って、
誰にも深入りしない顔。

昨日の雨のことなんて、
最初からなかったみたいに。

それが、
一番、効いた。

私だけが、取り乱してたんだ。

そう思うと、
自分がすごく惨めだった。

昼休み。

廊下で、すれ違う。

肩が触れそうな距離なのに、
視線は合わない。

朝陽は、
私を避けるでもなく、
選ぶでもなく、
ただ「通り過ぎた」。

それが、答えだった。