触れられない手

学校では、
朝陽の噂が増えていった。

「彼女いないのに、いつも誰かといるよね」
「軽いよね」

私は、それを聞くたびに、
少しずつ何かを手放していった。

――ああ、そうなんだ。

私の知らない朝陽は、
もう普通に生きている。

私だけが、
昔に取り残されている。

放課後、
一人で家に向かう途中。

雨の匂いがした。

胸がざわつく。

視線の先。
コンビニ前。

朝陽が、
女子と並んで立っていた。

笑っている。
軽く、楽しそうに。

私の存在なんて、
最初からなかったみたいに。

その瞬間、
はっきり思った。

――諦めなきゃ。

じゃないと、
自分が壊れる。