触れられない手

引っ越しの日。

段ボールを運び終えた帰り道、
ふと視線を感じた。

道の向こう、
電柱の影。

――朝陽。

今度は、一人だった。

でも、
目が合う前に、
彼はスマホを耳に当てて笑った。

「今? うん、行く」

誰かとの約束。

私のことなんて、
見ていないみたいに。

声をかける勇気は、なかった。

彼も、
振り返らなかった。