触れられない手

帰宅すると、おばあちゃんはいつも通りの笑顔で迎えてくれた。

「雨に濡れたわね、柚香」

「うん」

何も言わずに手を洗い、食卓に座る。
おばあちゃんは温かいお茶を差し出した。

「今日は朝陽くんに会ったの?」

心臓がざわつく。
「……少しだけ」

私は黙ってうつむく。
おばあちゃんは静かに微笑みながら、私の手を握った。

「大丈夫よ、柚香。昔のことは変えられないけど、今のあなたはちゃんと守れる」

その言葉に、涙が滲む。
でも、過去の雨の日を思うと、まだ胸が痛む。

夜、窓の外を見つめながら、私は心の中でつぶやく。
「ゆず……」

懐かしい名前。
でも、声には出せない。