触れられない手

昼休み、教室のざわめきの中で、私は机の上に手を置き、息を整えていた。

突然、男子生徒が朝陽のことをちらりと見て、笑った。
彼は小学校からの同級生で、朝陽とも私とも同じクラスだった木下祐希。

「なあ、朝陽ってさ、俺のこと覚えてる?」

朝陽は少し目を見開く。
「……ああ、木下か」

木下は笑いながら続ける。

「そうだ、柚香も覚えてるよな?小学校のとき、いつも一緒に遊んでたじゃん」

胸がぎゅっと締めつけられ、冷や汗が背中を伝う。
――やっぱり、バレてしまった。

私はとっさに目を伏せ、机の下で手を握りしめる。

「知らないよ……」

声は震え、精一杯笑顔を作っても、鏡に映る自分ですら作り物に見えた。

教室の空気が一瞬止まった。
誰も何も言わないけれど、確かに全員に伝わった。