触れられない手

学校では、
朝陽は完全に「転校生」だった。

無口で、
近寄りがたくて。

でも、
女子の視線は集まる。

私は、それを見ないふりをする。

見たら、
何かが壊れる気がして。

昼休み、
廊下ですれ違う。

ほんの一瞬、
肩が触れた。

「……っ」

反射的に、
二人同時に離れる。

周りには、誰もいない。

言葉が、喉まで上がる。

朝陽。

でも、声にはならなかった。

彼は、
私を見ないまま通り過ぎた。

それが、
正しい距離。

そう思わないと、
歩けなかった。