ふれあい児童養護施設、面談室。俺は今、雫と沈黙を貫いている。あのパーカーは渡した。けど、お互い顔が見られない。雫はいつも通り話しかけてくれるけど、どこかぎこちない。
《やっぱり、あの手紙のせいか……》
俺は、この前の面会で
『18歳になったら、結婚しよう』
という内容の手紙を雫に渡した。本当は口で言いたかったけど、この部屋には職員がいるから聞かれるわけにはいかなかった。恥ずかしかったから、個室で読むように伝えた。だから、俺も雫も顔が見られない。会話が長く続かない。俺は雫を1人の女性として見ているから。支え上げなきゃいけない存在なのは分かってる。けど……。雫はワイシャツの袖をキュッと掴んで口を開こうとしない。紙袋の中を見て、ハイソックスを取り出す。1メートルと記載されている。ハイソックスは雫は下の履き物、つまりズボンとかスカートを履いた経験が少ないから、長い靴下なら、足を冷やさずに済むかなと思った。タイツでも良かったが、あれは下着が履けなきゃ着心地が悪いと思う。防寒にはなるけど。あと、俺はハイソックスを履いていない。長くて履きにくいし脱ぎにくそうだから。でも、何もなくて足が冷えるよりかはマシだと思う。雫はそれを聞いて不安そうな顔をしていた。無理もない。雫の心身症は深刻だって分かってる。雫が着られるのは『俺が一度身につけた服』しか着られないから。本当は下着も慣れさせたいが、俺は男性だ。こんなこと言ったら、考えが古いかもしれないが男が女物の下着を着るのは不自然じゃないか。女装とかコスプレで胸を作るならまだ分かるけど、それをしないで女物の下着を着るのは無理だと思う。そもそも恥ずかしくて買えない。買えるわけない。上がクリアできても下は流石に無理だ。デリケートゾーンの直履きは、雫だって履きたくないと思う。絶対にそうだ。俺に姉か妹が居れば、頬を叩くとか一生口を聞いてくれなくても良いから着なくなった下着を雫に貸せたかもしれない。だって、俺と同じ血が流れている姉か妹なら、俺が一度身につけたという意味では同じわけだから履いても心身症は出ないと思う。実際に俺には姉も妹もいない独りっ子だけど、居たらそういう策も練られたなと思う。面談を終えて俺はひだまり荘に戻る。
ひだまり荘、桜井家。俺は寝室に入ってベッドに飛び込む。これも日常になっている。ベッドの半分には、雫考案の雫を模した抱き枕がある。俺はこれを毎日雫だと思って抱いて寝てる。だって抱き枕の使い道は抱いて寝ることの機能として作っているから、言ってることは間違っていない。けど、なんか卑しい気持ちにはなる。俺は明日も学校だ。学校が終わったらふれあい児童養護施設に電話して面談の日を予約する。部屋の中はクシャクシャと丸めた紙ばっかりだ。俺は面談で会いに行く以外でも、手紙や電話をしている。どうしても雫が心配だった。面談で雫の安否を確認すると心がホッとする。だから、面談が比較的多い。週に2~3回と言ったけど、それじゃ足りなかった。
ふれあい児童養護施設、面談室。週を跨いで、雫との面会で雫の両親がふれあい児童養護施設に来たという。最近音沙汰ないと思ったのに。俺の向かいに住んでいたが、いつの間にか表札も無くなっていたから、諦めて引っ越したと思っていたのに。でも、職員の児玉さんと男性職員の連携で、雫の両親を雫本人が目にすることは無かった。あとは、雫は保育施設の子どもたちから、慕われる存在になっているとも聞いた。けど、子どもたちは雫のことを『Yシャツのお姉ちゃん』や『パーカーのお姉ちゃん』と呼んでいるらしい。子どもらしくって可愛い呼び名だと思う。これで雫は将来の夢が見つかったと教えてくれた。保育施設の子どもたちだから、保育士の先生とかかな? 雫ならきっと慣れそう。
《やっぱり、あの手紙のせいか……》
俺は、この前の面会で
『18歳になったら、結婚しよう』
という内容の手紙を雫に渡した。本当は口で言いたかったけど、この部屋には職員がいるから聞かれるわけにはいかなかった。恥ずかしかったから、個室で読むように伝えた。だから、俺も雫も顔が見られない。会話が長く続かない。俺は雫を1人の女性として見ているから。支え上げなきゃいけない存在なのは分かってる。けど……。雫はワイシャツの袖をキュッと掴んで口を開こうとしない。紙袋の中を見て、ハイソックスを取り出す。1メートルと記載されている。ハイソックスは雫は下の履き物、つまりズボンとかスカートを履いた経験が少ないから、長い靴下なら、足を冷やさずに済むかなと思った。タイツでも良かったが、あれは下着が履けなきゃ着心地が悪いと思う。防寒にはなるけど。あと、俺はハイソックスを履いていない。長くて履きにくいし脱ぎにくそうだから。でも、何もなくて足が冷えるよりかはマシだと思う。雫はそれを聞いて不安そうな顔をしていた。無理もない。雫の心身症は深刻だって分かってる。雫が着られるのは『俺が一度身につけた服』しか着られないから。本当は下着も慣れさせたいが、俺は男性だ。こんなこと言ったら、考えが古いかもしれないが男が女物の下着を着るのは不自然じゃないか。女装とかコスプレで胸を作るならまだ分かるけど、それをしないで女物の下着を着るのは無理だと思う。そもそも恥ずかしくて買えない。買えるわけない。上がクリアできても下は流石に無理だ。デリケートゾーンの直履きは、雫だって履きたくないと思う。絶対にそうだ。俺に姉か妹が居れば、頬を叩くとか一生口を聞いてくれなくても良いから着なくなった下着を雫に貸せたかもしれない。だって、俺と同じ血が流れている姉か妹なら、俺が一度身につけたという意味では同じわけだから履いても心身症は出ないと思う。実際に俺には姉も妹もいない独りっ子だけど、居たらそういう策も練られたなと思う。面談を終えて俺はひだまり荘に戻る。
ひだまり荘、桜井家。俺は寝室に入ってベッドに飛び込む。これも日常になっている。ベッドの半分には、雫考案の雫を模した抱き枕がある。俺はこれを毎日雫だと思って抱いて寝てる。だって抱き枕の使い道は抱いて寝ることの機能として作っているから、言ってることは間違っていない。けど、なんか卑しい気持ちにはなる。俺は明日も学校だ。学校が終わったらふれあい児童養護施設に電話して面談の日を予約する。部屋の中はクシャクシャと丸めた紙ばっかりだ。俺は面談で会いに行く以外でも、手紙や電話をしている。どうしても雫が心配だった。面談で雫の安否を確認すると心がホッとする。だから、面談が比較的多い。週に2~3回と言ったけど、それじゃ足りなかった。
ふれあい児童養護施設、面談室。週を跨いで、雫との面会で雫の両親がふれあい児童養護施設に来たという。最近音沙汰ないと思ったのに。俺の向かいに住んでいたが、いつの間にか表札も無くなっていたから、諦めて引っ越したと思っていたのに。でも、職員の児玉さんと男性職員の連携で、雫の両親を雫本人が目にすることは無かった。あとは、雫は保育施設の子どもたちから、慕われる存在になっているとも聞いた。けど、子どもたちは雫のことを『Yシャツのお姉ちゃん』や『パーカーのお姉ちゃん』と呼んでいるらしい。子どもらしくって可愛い呼び名だと思う。これで雫は将来の夢が見つかったと教えてくれた。保育施設の子どもたちだから、保育士の先生とかかな? 雫ならきっと慣れそう。
