ひだまり荘、月島家玄関前。私はボロボロのバスタオルと共に家から追い出された。今の時間帯は昼下がり。廊下から日差しが差し込んで、私を照らす。私はドアを開けて欲しいと叩くと
「服を着ると賛同するまで開けてやらん!」
と。父の怒号が聞こえた。
「なんで、服を着ちゃいけないの?」
私が問いただすと
「これもお前の将来のためだ……お前も大人になれば家を出るだろ……嫁入りするのに、お前が裸族じゃ婿に合わせる顔がなくなる」
父は私の将来について話した。でも、私は服を着ると謎の腹痛と湿疹が出るから服なんて着られない。
「お前が服が着れないから、病院にも連れて行けん……」
父はそう言って、玄関から離れた。鍵も閉められた。これから、私はどうすればいいの?帰る場所もない。外に助けを求めてもこの着心地の悪いバスタオル1枚で外に出たら、警察に通報される。この先、どうやって生きていけばいいの?進むことも戻ることもできない。すると、奥から
ーーコトッ……コトッ……
と。足音が聞こえる。この階に住む人が帰ってきたんだ。私はどうすればいいのか分からなくなった。隠れる場所もないし、陽が照っているからすぐバレる。私は頭をフル回転しても解決策が見つからなかった。足音が近づいてくる。もうダメだ。
「はぁ……暑ぃ……」
若い男性の声だ。終わった。私はもうお嫁にいけない。いや、心身症になって、裸族になってからお嫁にいけないが正しいのかもしれない。
「え!?」
男性の驚いた声が聞こえた。私が男性を見ると、男性は高校生ぐらいの年齢で袖をめくったYシャツと黒の長ズボンを履いている。通学用のバッグを肩から下げている。そして、私を見て鳩が豆鉄砲を食らったような顔をして、きょとんとしている。私は恥ずかしく赤面して、男性に背を向ける。壁に自分の顔を突っ伏せる。すると、体に巻いていたボロボロのバスタオルの結びが解け、肌をあらわにした姿になってしまう。今の私は頭が混乱してそのことに気づいていない。男性からの応答がない。まだ、硬直しているのだろうか。そりゃ当然かもしれない。だって、藁素材に似た薄汚れたバスタオル1枚で外に出ている女の子なんてフィクションの世界でしか居ないから。
「これを着ろ!」
男性は私に何かを投げ渡す。私が背を向けたまま広げると男性がさっきまで着ていたYシャツだった。長袖の少し汗を吸っているYシャツ。私は男性に顔だけ向けて
「これはお返しします」
と言って、Yシャツを不器用に畳み直して手を伸ばし、返す。
「なんで返すの?」
男性が問いかける。
「私、服着れないので……」
私は心身症なんて言えなかった。
「着てくれないの困るんだけど!」
男性の口調が強くなった。私の目が涙で潤んだ。私は男性に体も向き直して
「服着たら湿疹出るから着れません! お返しします!」
と。怒鳴った。男性はYシャツを奪うように取ると広げ、羽織らせる。
「公然わいせつ罪で捕まりたくないだろう……」
男性は私を襲うわけでもなく、助けてくれた。これって普通なのだろうか。
「でも、服着たら湿疹が……」
「何も着ないで外出るか? 普通?……」
「それは……ちょっと事情が……」
男性はYシャツのボタンを閉める。男性はYシャツの下には白い無地の半袖Tシャツを着ていた。
「ちょうど、暑かったし……ウィンウィンだろう……」
男性はYシャツのボタンを全て閉めると、私の肩をポンッと叩いて部屋のドアの鍵を開ける。
「待って!」
私が呼び止めると
「どうしたの?」
男性が向き直る。
「部屋に入ってもいい? 帰る場所ないの……」
私はYシャツの裾をキュッと掴む。
「入れてやってもいいけど、俺も学生だしな……」
男性は私と同じ学生のようだ。
「そこのドアが君の家族の家じゃないの?」
男性は表札の『月島』を指差す。
「今は、入れてもらえないから……」
私は下を向く。もうこの家には帰れない。心身症が治るまでは。
「数分経ったな……」
男性は私に視線を移し、
「そのYシャツ着て、どう?」
男性は私に着心地を聞く。
「このバスタオルよりは気持ちいい……」
そして、私は手元を見る。湿疹の赤いポツポツも出ないし、謎の腹痛もない。
「症状が出ない……」
私が呟くと
「どんな事情があるのかは知らないけど……俺のYシャツ1枚でここに放置するわけにもいかないし、俺の部屋入って……」
男性はドアを開ける。男性は私の部屋の向かいだった。表札には『桜井』と書いてある。
「あ、ありがとうございます……桜井さん」
私は汚れたバスタオルに目もくれず、入る。
「俺の名前律だから、律って呼んでくれ……」
律さんは、名前を教えてくれた。そしてドアから離れて汚れたバスタオルを手に取った。
「これ、捨てるやつだろ……」
律さんは、そのバスタオルを不器用に畳む。
「君の名前は何ていうの?」
律さんが聞く。
「わ、私は月島雫です……」
「やっぱり向かいの部屋の人か……」
律は、ドアに向かう。
「どこに通ってるの?」
「私は、通信制で家で勉強しています……律さんは?」
「俺は歩いて数分の緑ケ丘総合高校の昼の部に通ってる……定時制だよ」
律さんは定時制の高校生だった。
「何年生ですか?」
私が年齢を聞くと、
「まだ1年だ……」
「私も高校1年です……」
「タメか……」
律さんはそう言って、部屋の鍵を抜き、ドアを閉める。
「立ち話もなんだし……、ダイニングに向かうか……喉も乾いたし……」
律さんは靴を脱いで、部屋に向かう。
「あ! そうだ……」
律さんは玄関のすぐそばのドアを開けて、水を流す音が聞こえた。ジャブジャブと何かを洗う音が聞こえる。数分経つと、律さんはタオルを差し出す。
「これで、足の裏を拭いて……」
私が手に取ると、そのタオルは冷たくて濡れていた。これを洗っていたのか。確かに、私は裸足で追い出された。母に
『後は何一ついらない』
と言われたし、いきなりドアから放り投げられたように追い出されたから、靴を履く余裕も無かった。
「足の裏、拭き終わったら……、ダイニングに来てね……」
律さんは、そう言って奥の部屋に向かった。そして、流し台で手を洗っていた。なんか、律さんなら安心できる人だ。
「服を着ると賛同するまで開けてやらん!」
と。父の怒号が聞こえた。
「なんで、服を着ちゃいけないの?」
私が問いただすと
「これもお前の将来のためだ……お前も大人になれば家を出るだろ……嫁入りするのに、お前が裸族じゃ婿に合わせる顔がなくなる」
父は私の将来について話した。でも、私は服を着ると謎の腹痛と湿疹が出るから服なんて着られない。
「お前が服が着れないから、病院にも連れて行けん……」
父はそう言って、玄関から離れた。鍵も閉められた。これから、私はどうすればいいの?帰る場所もない。外に助けを求めてもこの着心地の悪いバスタオル1枚で外に出たら、警察に通報される。この先、どうやって生きていけばいいの?進むことも戻ることもできない。すると、奥から
ーーコトッ……コトッ……
と。足音が聞こえる。この階に住む人が帰ってきたんだ。私はどうすればいいのか分からなくなった。隠れる場所もないし、陽が照っているからすぐバレる。私は頭をフル回転しても解決策が見つからなかった。足音が近づいてくる。もうダメだ。
「はぁ……暑ぃ……」
若い男性の声だ。終わった。私はもうお嫁にいけない。いや、心身症になって、裸族になってからお嫁にいけないが正しいのかもしれない。
「え!?」
男性の驚いた声が聞こえた。私が男性を見ると、男性は高校生ぐらいの年齢で袖をめくったYシャツと黒の長ズボンを履いている。通学用のバッグを肩から下げている。そして、私を見て鳩が豆鉄砲を食らったような顔をして、きょとんとしている。私は恥ずかしく赤面して、男性に背を向ける。壁に自分の顔を突っ伏せる。すると、体に巻いていたボロボロのバスタオルの結びが解け、肌をあらわにした姿になってしまう。今の私は頭が混乱してそのことに気づいていない。男性からの応答がない。まだ、硬直しているのだろうか。そりゃ当然かもしれない。だって、藁素材に似た薄汚れたバスタオル1枚で外に出ている女の子なんてフィクションの世界でしか居ないから。
「これを着ろ!」
男性は私に何かを投げ渡す。私が背を向けたまま広げると男性がさっきまで着ていたYシャツだった。長袖の少し汗を吸っているYシャツ。私は男性に顔だけ向けて
「これはお返しします」
と言って、Yシャツを不器用に畳み直して手を伸ばし、返す。
「なんで返すの?」
男性が問いかける。
「私、服着れないので……」
私は心身症なんて言えなかった。
「着てくれないの困るんだけど!」
男性の口調が強くなった。私の目が涙で潤んだ。私は男性に体も向き直して
「服着たら湿疹出るから着れません! お返しします!」
と。怒鳴った。男性はYシャツを奪うように取ると広げ、羽織らせる。
「公然わいせつ罪で捕まりたくないだろう……」
男性は私を襲うわけでもなく、助けてくれた。これって普通なのだろうか。
「でも、服着たら湿疹が……」
「何も着ないで外出るか? 普通?……」
「それは……ちょっと事情が……」
男性はYシャツのボタンを閉める。男性はYシャツの下には白い無地の半袖Tシャツを着ていた。
「ちょうど、暑かったし……ウィンウィンだろう……」
男性はYシャツのボタンを全て閉めると、私の肩をポンッと叩いて部屋のドアの鍵を開ける。
「待って!」
私が呼び止めると
「どうしたの?」
男性が向き直る。
「部屋に入ってもいい? 帰る場所ないの……」
私はYシャツの裾をキュッと掴む。
「入れてやってもいいけど、俺も学生だしな……」
男性は私と同じ学生のようだ。
「そこのドアが君の家族の家じゃないの?」
男性は表札の『月島』を指差す。
「今は、入れてもらえないから……」
私は下を向く。もうこの家には帰れない。心身症が治るまでは。
「数分経ったな……」
男性は私に視線を移し、
「そのYシャツ着て、どう?」
男性は私に着心地を聞く。
「このバスタオルよりは気持ちいい……」
そして、私は手元を見る。湿疹の赤いポツポツも出ないし、謎の腹痛もない。
「症状が出ない……」
私が呟くと
「どんな事情があるのかは知らないけど……俺のYシャツ1枚でここに放置するわけにもいかないし、俺の部屋入って……」
男性はドアを開ける。男性は私の部屋の向かいだった。表札には『桜井』と書いてある。
「あ、ありがとうございます……桜井さん」
私は汚れたバスタオルに目もくれず、入る。
「俺の名前律だから、律って呼んでくれ……」
律さんは、名前を教えてくれた。そしてドアから離れて汚れたバスタオルを手に取った。
「これ、捨てるやつだろ……」
律さんは、そのバスタオルを不器用に畳む。
「君の名前は何ていうの?」
律さんが聞く。
「わ、私は月島雫です……」
「やっぱり向かいの部屋の人か……」
律は、ドアに向かう。
「どこに通ってるの?」
「私は、通信制で家で勉強しています……律さんは?」
「俺は歩いて数分の緑ケ丘総合高校の昼の部に通ってる……定時制だよ」
律さんは定時制の高校生だった。
「何年生ですか?」
私が年齢を聞くと、
「まだ1年だ……」
「私も高校1年です……」
「タメか……」
律さんはそう言って、部屋の鍵を抜き、ドアを閉める。
「立ち話もなんだし……、ダイニングに向かうか……喉も乾いたし……」
律さんは靴を脱いで、部屋に向かう。
「あ! そうだ……」
律さんは玄関のすぐそばのドアを開けて、水を流す音が聞こえた。ジャブジャブと何かを洗う音が聞こえる。数分経つと、律さんはタオルを差し出す。
「これで、足の裏を拭いて……」
私が手に取ると、そのタオルは冷たくて濡れていた。これを洗っていたのか。確かに、私は裸足で追い出された。母に
『後は何一ついらない』
と言われたし、いきなりドアから放り投げられたように追い出されたから、靴を履く余裕も無かった。
「足の裏、拭き終わったら……、ダイニングに来てね……」
律さんは、そう言って奥の部屋に向かった。そして、流し台で手を洗っていた。なんか、律さんなら安心できる人だ。
