桜井家、ダイニング。俺は雫が選んだ、ふれあい児童相談所に電話をかけることにした。一応、事情も説明するため雫は俺の部屋に席を外してもらっている。
『はい、ふれあい児童相談所です』
男性の職員が電話に出た。
「あの、すみません、緊急でご相談したいことがあります……高校生の桜井律と申します」
『はい、律さんですね……どのようなご相談でしょうか?』
俺は少し息を詰めた。
「はい! 友人の女の子なんですが、数週間前、親から家を追い出されてしまって……現在、俺の家に保護しています」
『そうですか、それは大変ですね……詳細をお聞かせいただけますか? 年齢は?』
男性職員が問う。
「名前は、月島雫で蒼空高等学院の生徒で、今は高校1年生です……そして、その、雫には、少し特殊な事情があるんです」
『特殊な事情、と申されますと?』
俺は口ごもった。裸族とは言えなかった。
「はい……雫は、服を着ると湿疹が出てしまう心身症を患っています……症状は、湿疹が全身に広がるんです」
俺は裸族という言葉を使わず、男性職員に雫の深刻さを伝えた。
『……服を着られない、と? それはまた……現在のご様子は?』
男性職員は、今の雫の状況を聞く。
「今は、俺のYシャツを着ています……なぜか、俺のYシャツだけは、症状が出ないんです……それで、今はなんとか落ち着いていますが、追い出された時は、裸同然で……ボロボロのバスタオルみたいな布を巻いているだけでした」
俺は雫と初めて出会った日が頭の中でフラッシュバックしていた。あの暑い日に、俺が助けなかったらと思うだけで胸が苦しくなる。男性職員は驚いたかもしれないが、冷静な声で
『なるほど……心身症で、特定の衣類以外は着用できないのですね? 親御さんから追い出されたということですが、ご両親が再び接触してくる可能性は?』
男性職員は、雫の両親について聞く。
「はい、すでに一度、俺の家に押し掛けてきて、『娘を返せ』と激しく怒鳴り散らしていきました……警察を呼ぶと伝えて、なんとか引き下がらせましたが、また来るかもしれません……俺自身はまだ未成年で、法的に雫の監護者になることもできません! このまま俺の家に置いておくのは、雫の安全を保障できないと考えています」
俺は例え目上の人でも、雫を『彼女』と言えなかった。
『状況はよく分かりました……大変危険な状態ですね……すぐに保護の必要があると判断いたします……彼女の心身症の件も承知いたしました! 施設での受け入れに際して、その点を考慮し、最大限配慮いたします! 今から職員を派遣し、保護に向かいます! 詳しい住所と、現在の状況をもう一度お聞かせいただけますか?』
俺は安堵の息を漏らし
「ありがとうございます……ですが、数日だけ猶予をくれませんか? 買い揃えるものがあるので……住所はひだまり荘です」
俺は男性職員に住所を伝えて電話を切る。俺は雫の様子を窺うために、部屋に入る。雫は俺のベッドで横になっていた。俺のYシャツの袖をキュッと掴んでいた。
「雫……」
俺は寝ている雫に背を向けず、話しかける。
「まだ、決断できていないのは分かっている……でも、この国の法律に背いたら俺は刑務所に入ることになるから……」
重い空気が漂っていた。雫には児童相談所が一番安全だが、俺は雫と離れたくなかった。1秒たりとも……いや、0.1秒たりとも離れたくなかった。すると、雫が口を開いた。
「紙とペンを用意してくれる?」
と。蚊の鳴くような細い声だった。俺は、自分の学習ノートの1ページを破りシャープペンシルを雫に渡す。雫はベッドの上で紙に何かを書いていた。体感数分ぐらい経って、俺に紙とシャープペンシルを返した。紙には児童相談所に持っていく持ち物が書いてあった。
「私は決断できてる……律さんと離れるのは、悲しいけど、自分の安全は自分で守らないといけないし……」
雫は、心は弱いけどちゃんと芯のある女の子だ。俺は出かける支度をして、雫の書いたリストを元に大型ショッピングモールへ向かった。
大型ショッピングモール、日用品100円均一店。俺はタオルと歯磨きセットを買った。袋類のシャンプーもあったが、児童相談所で準備してると思い買わないことにした。
大型ショッピングモール、スーツ店。俺は長袖の白いYシャツ数枚を買った。結構高いけど、試着室で試着した。これで、雫も安心して着られる。雫は『俺が一度身につけた服』なら、心身症は出ないと思うから。
大型ショッピングモール、スーパー。俺は周りに人がいないことを確認しある商品を手に取って足早にセルフレジに向かった。男である俺が買ったらおかしいものだが、雫のことを考えると買えざるを得なかった。
ひだまり荘、桜井家。俺は大量の荷物を持って帰ってきた。
「おかえりなさい……」
か細い雫の声が聞こえた。
「た、ただいま……」
俺は荷物を置いて、旅行用のキャリーケースを取り出す。まずは、数枚のYシャツ(1回試着済み)のタグを外して入れた。そして、タオルや歯磨きセットなどの日用品も入れた。そして、雫の筆記用具やノート、タブレットの使用年齢を下げて、充電器と共に入れた。
「これで、準備できた……」
俺は時計を見る。もう夜の7時だった。
2日後、ダイニング。明日、雫は児童相談所に行く。翌日夜の10時以降に来るという連絡があった。俺は今日はご馳走を作った。俺は冷そうめんを作った。夏にぴったりだし、今不安な雫にとっても喉が通る食事にした。雫も少量ながらも冷そうめんを食べてくれた。余ったから、炒め物にしようと思う。
寝室。俺は今日も雫と同じくセミシングルベッドの半分を使って寝る。俺は雫がYシャツを脱ぎ、ベッドに潜ったところで雫に顔を向ける。
「雫、抱いていい?」
俺が聞くと雫は目を見開いて
「ダ、ダメだよ! 私と律さんは……まだ16歳だよ?」
雫は拒否した。たぶん、性的な意味の『抱く』に聞こえたのかもしれない。
「抱くと言っても、愛情を深めるためにギューするだけだ……」
俺は家族間でもよくする抱きしめる方の抱くだと説明した。だが雫は
「でも、私は今……」
雫が毛布を掴んで、体を隠している。拒否し続ける雫に俺は口封じという名目で自分と雫の唇を重ねた。雫の唇は淡水の味がした。雫はすごく驚いた表情をしていた。俺は雫に背を向けて眠ったフリをした。俺が眠れないのは、ただ1つ……雫とファーストキスしたから。
『はい、ふれあい児童相談所です』
男性の職員が電話に出た。
「あの、すみません、緊急でご相談したいことがあります……高校生の桜井律と申します」
『はい、律さんですね……どのようなご相談でしょうか?』
俺は少し息を詰めた。
「はい! 友人の女の子なんですが、数週間前、親から家を追い出されてしまって……現在、俺の家に保護しています」
『そうですか、それは大変ですね……詳細をお聞かせいただけますか? 年齢は?』
男性職員が問う。
「名前は、月島雫で蒼空高等学院の生徒で、今は高校1年生です……そして、その、雫には、少し特殊な事情があるんです」
『特殊な事情、と申されますと?』
俺は口ごもった。裸族とは言えなかった。
「はい……雫は、服を着ると湿疹が出てしまう心身症を患っています……症状は、湿疹が全身に広がるんです」
俺は裸族という言葉を使わず、男性職員に雫の深刻さを伝えた。
『……服を着られない、と? それはまた……現在のご様子は?』
男性職員は、今の雫の状況を聞く。
「今は、俺のYシャツを着ています……なぜか、俺のYシャツだけは、症状が出ないんです……それで、今はなんとか落ち着いていますが、追い出された時は、裸同然で……ボロボロのバスタオルみたいな布を巻いているだけでした」
俺は雫と初めて出会った日が頭の中でフラッシュバックしていた。あの暑い日に、俺が助けなかったらと思うだけで胸が苦しくなる。男性職員は驚いたかもしれないが、冷静な声で
『なるほど……心身症で、特定の衣類以外は着用できないのですね? 親御さんから追い出されたということですが、ご両親が再び接触してくる可能性は?』
男性職員は、雫の両親について聞く。
「はい、すでに一度、俺の家に押し掛けてきて、『娘を返せ』と激しく怒鳴り散らしていきました……警察を呼ぶと伝えて、なんとか引き下がらせましたが、また来るかもしれません……俺自身はまだ未成年で、法的に雫の監護者になることもできません! このまま俺の家に置いておくのは、雫の安全を保障できないと考えています」
俺は例え目上の人でも、雫を『彼女』と言えなかった。
『状況はよく分かりました……大変危険な状態ですね……すぐに保護の必要があると判断いたします……彼女の心身症の件も承知いたしました! 施設での受け入れに際して、その点を考慮し、最大限配慮いたします! 今から職員を派遣し、保護に向かいます! 詳しい住所と、現在の状況をもう一度お聞かせいただけますか?』
俺は安堵の息を漏らし
「ありがとうございます……ですが、数日だけ猶予をくれませんか? 買い揃えるものがあるので……住所はひだまり荘です」
俺は男性職員に住所を伝えて電話を切る。俺は雫の様子を窺うために、部屋に入る。雫は俺のベッドで横になっていた。俺のYシャツの袖をキュッと掴んでいた。
「雫……」
俺は寝ている雫に背を向けず、話しかける。
「まだ、決断できていないのは分かっている……でも、この国の法律に背いたら俺は刑務所に入ることになるから……」
重い空気が漂っていた。雫には児童相談所が一番安全だが、俺は雫と離れたくなかった。1秒たりとも……いや、0.1秒たりとも離れたくなかった。すると、雫が口を開いた。
「紙とペンを用意してくれる?」
と。蚊の鳴くような細い声だった。俺は、自分の学習ノートの1ページを破りシャープペンシルを雫に渡す。雫はベッドの上で紙に何かを書いていた。体感数分ぐらい経って、俺に紙とシャープペンシルを返した。紙には児童相談所に持っていく持ち物が書いてあった。
「私は決断できてる……律さんと離れるのは、悲しいけど、自分の安全は自分で守らないといけないし……」
雫は、心は弱いけどちゃんと芯のある女の子だ。俺は出かける支度をして、雫の書いたリストを元に大型ショッピングモールへ向かった。
大型ショッピングモール、日用品100円均一店。俺はタオルと歯磨きセットを買った。袋類のシャンプーもあったが、児童相談所で準備してると思い買わないことにした。
大型ショッピングモール、スーツ店。俺は長袖の白いYシャツ数枚を買った。結構高いけど、試着室で試着した。これで、雫も安心して着られる。雫は『俺が一度身につけた服』なら、心身症は出ないと思うから。
大型ショッピングモール、スーパー。俺は周りに人がいないことを確認しある商品を手に取って足早にセルフレジに向かった。男である俺が買ったらおかしいものだが、雫のことを考えると買えざるを得なかった。
ひだまり荘、桜井家。俺は大量の荷物を持って帰ってきた。
「おかえりなさい……」
か細い雫の声が聞こえた。
「た、ただいま……」
俺は荷物を置いて、旅行用のキャリーケースを取り出す。まずは、数枚のYシャツ(1回試着済み)のタグを外して入れた。そして、タオルや歯磨きセットなどの日用品も入れた。そして、雫の筆記用具やノート、タブレットの使用年齢を下げて、充電器と共に入れた。
「これで、準備できた……」
俺は時計を見る。もう夜の7時だった。
2日後、ダイニング。明日、雫は児童相談所に行く。翌日夜の10時以降に来るという連絡があった。俺は今日はご馳走を作った。俺は冷そうめんを作った。夏にぴったりだし、今不安な雫にとっても喉が通る食事にした。雫も少量ながらも冷そうめんを食べてくれた。余ったから、炒め物にしようと思う。
寝室。俺は今日も雫と同じくセミシングルベッドの半分を使って寝る。俺は雫がYシャツを脱ぎ、ベッドに潜ったところで雫に顔を向ける。
「雫、抱いていい?」
俺が聞くと雫は目を見開いて
「ダ、ダメだよ! 私と律さんは……まだ16歳だよ?」
雫は拒否した。たぶん、性的な意味の『抱く』に聞こえたのかもしれない。
「抱くと言っても、愛情を深めるためにギューするだけだ……」
俺は家族間でもよくする抱きしめる方の抱くだと説明した。だが雫は
「でも、私は今……」
雫が毛布を掴んで、体を隠している。拒否し続ける雫に俺は口封じという名目で自分と雫の唇を重ねた。雫の唇は淡水の味がした。雫はすごく驚いた表情をしていた。俺は雫に背を向けて眠ったフリをした。俺が眠れないのは、ただ1つ……雫とファーストキスしたから。
