【番外編】あなたが白制服に着替えたら、それが愛のはじまり

 ※これは2人が出会った日のお話です※




「成瀬二尉!ちょっと、いいか」

柊慈が青森に赴任して数か月がたった。
本日、小湊基地でサマーフェスタが行われる。
その準備に追われていた柊慈は上官から声をかけられた。

「白戸一尉がインフルエンザで休みになった。急で悪いが、今日の体験ヘリの搭乗を成瀬に任せたい」

「…はい、わかりました」

毎度のことだが出来るかと問われて出来ませんとは言えない。
だから当然答えはYESだ。

「お前の仕事は三井に引き継げ」

「了解しました」


先日、東京の本社に出張になった白戸一尉はインフルエンザをもらってきてしまった。
本当なら白戸が搭乗するはずだった体験ヘリは柊慈が担当することになった。

さらにこの後、三井からとんでもない情報を聞くことになる。

「大変です。船のボイラーが壊れて、ライフラインの提供が出来ないみたいです」

「え?じゃあ、どこで寝泊まりするんだ?」
「気合いの野宿っすかね」

笑えない冗談をいう三井に目を細める柊慈。

「たぶん、空いている独身寮とかホテルに振替じゃないっすか」

三井の楽観さは時に柊慈を和ませる。しかし、今回に限ってはそうは言ってられなかった。
トラブルが寝食に関わるとかなり面倒だ。

「フェスなんてやってる場合じゃないよな」

珍しく愚痴る柊慈は事務所に向かった。

(やらないといけないことが山ほどあるというのに)

「おう、成瀬。お疲れさん」
そう気軽に声をかけてきたのが井沢佳孝だった。
夏帆の父親だ。

「船が壊れたんだって?」
「詳細はわかりませんが、そうらしいですね」
「行く当てはあるのか?」
「さあ、まだ何も言われてないですね」
「…よかったらうちにくるか?」
「井沢さんの家ですか?」
「古いけどそこそこ広い一軒家で、部屋が余ってんだよ」

「そうですか…。では、どうしようもなくなったらその時はよろしくお願いします」

柊慈は井沢家との同居に含みを持たせて返した。



こうして運命が二人を少しづつ近づける―――



そしていよいよフェスが始まった。
会場は多くの人でにぎわっていた。
柊慈は配置に向かう。

(先輩の代わりでヘリに乗ることになるし船は壊れるし。何の因果でこうなるのやら)

それにどんな意味があるのか、この時の柊慈にはまだ知る由もない。

柊慈がチラッと空を見上げた。
本日は見事な晴天だ。こういう空をみると心が一瞬で晴れる。

なぜか今日は良いことが起りそうな気がしてきた。

(さあ、いきますか)

柊慈は颯爽とヘリに向かう。
その時、一人の女性とぶつかった。


「おっと。大丈夫ですか?」
「は、はい。大丈夫です」


始まりは何気ない会話だった。


柊慈は再びヘリに向かい歩みを進める。
女性は連れの友達のもとに駆け寄る。
そして、その友達は呆れるように言った。



「夏帆って歩くの下手だね」


「そうかな?」



そしてここから、
夏帆と柊慈の物語が始まる。



      ―― end ――