地元なじみ。


ミーンミンミーン……
蝉の声が聞こえる夏の真っ只中――中学1年生になった私は、中学生最初の夏休みを迎えた。

「あかり、おつかれさまー」
「あっ先輩、お疲れ様です!」

中学生になって色々と変わった。
私服じゃなくて制服になった。授業も難しくなった。そして、部活が始まった。上級生を先輩と呼ぶようになった。

私は小学校の時にミニバスを習っていたこともあって、バスケ部に入部した。
梓ちゃんは、運動は無理!とのことで、吹奏楽部に入った。
……なのに肺活量を鍛えるために意外とマラソンが多いようで、「こんなはずじゃなかった……」なんて言いながらも頑張っている。

とはいえ、変わらないこともある。
受験をした子以外は小学校の子がそのまま一緒に同じ中学校だから、学年の3分の2を占める子はみんな知っている友達。残りは他の小学校の子で、中学から一緒になった。
私が通う中学校は小学校の隣にあるので、通学の道のりも変わらない。これはちょっと残念。


時刻はお昼すぎ。
今日の午前の練習が終わった。
うちの中学校はジャージ通学禁止なので、練習後も制服にちゃんと着替える。
汗もかいているし、めんどくさいなとも思うけれど、中学生になったって実感できる制服が私は好き。
柑橘系の制汗剤をシューっとかけ、いい香りに包まれ満足して校舎の外に出る。

バスケ部の友達と校門に向かって歩いている途中、私たちとは反対に校門から入ってくる集団がいた。
他校の人たちかな、なんて思いながらも、集団からは顔をそらして友達の方を見て話していると、すれ違いざまに肩を叩かれた。

「え、なんで……」

肩を叩かれて振り向いたら、その相手は早川くんだった。
一気に心拍数があがる。

「練習試合。男子から聞いてない?」
「知らなかった、うち割と男女別だから」
「ふーん」

じゃ、と言って早川くんは他の人たちと一緒に校舎の方へ行ってしまった。
相変わらずの短い会話。けれど、嬉しすぎてドキドキして、顔がにやけてしまう。
何より……私がバスケ部だって知っていてくれたことが嬉しい。

塾内で部活の話が出ることはあるけれど、直接早川くんに話したことはないはず。
なぜなら気持ちを自覚して以降、早川くんとの会話は数えるほどしかなく、恥ずかしながらその全部を覚えているから。
私は塾での会話に聞き耳を立てて、早川くんがバスケ部、ちなみに平塚くんと三島くんがサッカー部ということは知っていた。
早川くんも同じように私と梓ちゃんの会話が聞こえていて、もしそれで覚えていてくれてなら嬉しすぎる。

そういえば、制服初めて見た。
塾には1回家に帰ってから来ているみたいで、いつも私服だったから。ちなみに私もそう。

試合……出るのかな。1年生だからあまり出ないかな。
……見たいな。

「男子練習試合なんだね~」
「ね、ちょっと見ていかない?佐藤先輩のカッコイイプレー見たくない?」
「いいね!行こうよ!あかりは?」
「みんな行くなら行こうかな」

ちょうど良いタイミングで仲間のナイスな提案。当然、乗っかった。
見かけはクールを装いつつ内心は、やったー!!と大喜びしながら。