地元なじみ。


季節は巡って冬――小学校6年生の2月、来月には卒業式がせまっている。
いつも通り塾に向かって一緒に歩いている中で、梓ちゃんがふと、真剣な声色で話し始めた。

「あかり……あ、あのさ」
「なーに?」
「塾の男子にチョコ……一緒に渡さない?」
「チョコ?なんで?」
「その……来週バレンタインじゃん?」
「バレンタイン……」

そっか、今まで自分には無縁のイベントだったから、梓ちゃんに言われて初めて気がついた。
クラスの女の子たちも高学年になるにつれて、毎年この話題で盛り上がっていたのを思い出す。

「いいけど……塾の男子みんなに渡すの?多くない?」
「いやっ、みんなじゃなくて……その……」

梓ちゃんはモジモジしながら言い淀んでいる。

「みっ、三島くんたちに!……渡さない?」

意外な名前があがってビックリ。でもこの反応、いくら鈍感な私でもなんとなくわかる。
えー!梓ちゃんそうなの!?いつからー!?と聞きたい気持ちをこらえて、冷静に返す。

「三島くんたちっていうのは……平塚くんと早川くんの3人ってこと?」
「うん……私も3人に渡すから、あかりも3人に渡さない?」
「みんなに渡すでいいの?三島くんだけに渡せば……」
「いいの!今はまだ……3人一緒にで」

梓ちゃんはかぶせるように言った。
赤くなって照れている、可愛い。

詳しく聞いてみると、あの夏祭りの日、私が早川くんと話している時に、梓ちゃんは三島くんと平塚くんと屋台で会って一緒に話して少し仲良くなって、意識するようになったらしい。
あれ以降、そんな素振りは全くなかったのでびっくりだけど、なんだか私も嬉しい。
大好きな梓ちゃんのために私も協力したいから、チョコの件は迷わずOKをした。