「あっ……よ、よろしくね」
「……うん」
小学5年生の冬――今日から駅前の塾に入る。
中学受験をするわけではなく、普通に学校の勉強のおさらいをする感じ。
私――藤沢 朱莉(ふじさわ あかり)は、緊張しながら隣の席の男子に挨拶をした。
違う学校の子だから緊張する。そもそもこの塾には私と同じ学校の子はいないみたいで、より緊張している。
挨拶の相手――早川 陽向(はやかわ ひなた)はチラッとこっちを見て一言発しただけで、視線をまた手元のテキストに戻し授業の準備をしている。
結局これ以降、今日は全く会話がなく、塾が終わった。
けれど、初めての塾で緊張していた私は授業を聞くのに精一杯で、余裕がなかったのでちょうど良かった。
授業はわかりやすくて先生も面白くて、塾って楽しいかも……って気持ちになっていた。
2週間後――塾の国語の授業。
「はい、そこまで!隣の人と交換して」
入ってから毎回国語の授業では漢字テストをして、隣の席の人と交換して丸付けをする。ちなみに算数では計算テスト。
塾は週に2回授業があって、席は先生が決めた席で前回と同じ。だいたい1か月で席替えをするらしい。
あ……「ぎょうにんべん」なのに「にんべん」になってる……
隣の席の早川くんの漢字テストを丸付けしていて、「復」いう字が1本線が足りないように見える。
あっでも……薄く書いてあるのかな?いや、やっぱ書いていないかな……
うーん……迷う。
でも×を付けるのもちょっと気が引ける……私入ったばかりだし……
もだもだ考えて、結局○にした。
丸付けを終えて、早川くんとお互いのテストを戻す。
受け取るなり、早川くんはジーっと自分の解答用紙を見ている。
「これ……×だよね」
早川くんが小さな声で呟いた。
あ……気づかれた。
も、もしかして怒ってる……?変な情けかけるなよ、みたいな。
「ご、ごめん。気づいたら○にしてて……」
ビクビクして慌ててしまって、意味わからない言い訳をしてしまった。
マズイ、何か言われるかなとハラハラしていたら……
「ふっ……何それ」
笑った……初めて見た。
「そっちの見てたら気づいた」
「あ……学校で先生がちょうどこの漢字気を付けてねって言ってたから、覚えてて……」
「ふーん」
そっちというのは私のこと……なのかな。
学校の男子はみんな「藤沢」って呼ぶから、ちょっと新鮮というか変な感じ。
そういえば初めて話しかけられたな。そもそもちゃんとした会話も初めてな気がする。
怒られるかもと思っていたから拍子抜けてしまった。
早川くんはスッと普段通りに戻って、自分で×を付けて、私が書いた100点の文字を消して95点に書き直している。
真面目なんだな。
勝手ながら、いつもふざけて汚い文字で漢字ドリルを書いて先生に怒られているクラスの男子と比較してしまった。
「……うん」
小学5年生の冬――今日から駅前の塾に入る。
中学受験をするわけではなく、普通に学校の勉強のおさらいをする感じ。
私――藤沢 朱莉(ふじさわ あかり)は、緊張しながら隣の席の男子に挨拶をした。
違う学校の子だから緊張する。そもそもこの塾には私と同じ学校の子はいないみたいで、より緊張している。
挨拶の相手――早川 陽向(はやかわ ひなた)はチラッとこっちを見て一言発しただけで、視線をまた手元のテキストに戻し授業の準備をしている。
結局これ以降、今日は全く会話がなく、塾が終わった。
けれど、初めての塾で緊張していた私は授業を聞くのに精一杯で、余裕がなかったのでちょうど良かった。
授業はわかりやすくて先生も面白くて、塾って楽しいかも……って気持ちになっていた。
2週間後――塾の国語の授業。
「はい、そこまで!隣の人と交換して」
入ってから毎回国語の授業では漢字テストをして、隣の席の人と交換して丸付けをする。ちなみに算数では計算テスト。
塾は週に2回授業があって、席は先生が決めた席で前回と同じ。だいたい1か月で席替えをするらしい。
あ……「ぎょうにんべん」なのに「にんべん」になってる……
隣の席の早川くんの漢字テストを丸付けしていて、「復」いう字が1本線が足りないように見える。
あっでも……薄く書いてあるのかな?いや、やっぱ書いていないかな……
うーん……迷う。
でも×を付けるのもちょっと気が引ける……私入ったばかりだし……
もだもだ考えて、結局○にした。
丸付けを終えて、早川くんとお互いのテストを戻す。
受け取るなり、早川くんはジーっと自分の解答用紙を見ている。
「これ……×だよね」
早川くんが小さな声で呟いた。
あ……気づかれた。
も、もしかして怒ってる……?変な情けかけるなよ、みたいな。
「ご、ごめん。気づいたら○にしてて……」
ビクビクして慌ててしまって、意味わからない言い訳をしてしまった。
マズイ、何か言われるかなとハラハラしていたら……
「ふっ……何それ」
笑った……初めて見た。
「そっちの見てたら気づいた」
「あ……学校で先生がちょうどこの漢字気を付けてねって言ってたから、覚えてて……」
「ふーん」
そっちというのは私のこと……なのかな。
学校の男子はみんな「藤沢」って呼ぶから、ちょっと新鮮というか変な感じ。
そういえば初めて話しかけられたな。そもそもちゃんとした会話も初めてな気がする。
怒られるかもと思っていたから拍子抜けてしまった。
早川くんはスッと普段通りに戻って、自分で×を付けて、私が書いた100点の文字を消して95点に書き直している。
真面目なんだな。
勝手ながら、いつもふざけて汚い文字で漢字ドリルを書いて先生に怒られているクラスの男子と比較してしまった。

