「あっ……よ、よろしくね」
「……うん」
小学5年生の冬――今日から駅前の塾に入る。
中学受験をするわけではなく、普通に学校の勉強のおさらいをする感じ。
私――藤沢 朱莉(ふじさわ あかり)は、緊張しながら隣の席の男子に挨拶をした。
違う学校の子だから緊張する。そもそもこの塾には私と同じ学校の子はいないみたいで、より緊張している。
挨拶の相手――早川 陽向(はやかわ ひなた)はチラッとこっちを見て一言発しただけで、視線をまた手元のテキストに戻し授業の準備をしている。
結局これ以降、今日は全く会話がなく、塾が終わった。
けれど、初めての塾で緊張していた私は授業を聞くのに精一杯で、余裕がなかったのでちょうど良かった。
授業はわかりやすくて先生も面白くて、塾って楽しいかも……って気持ちになっていた。

