Natural Snow

-千景side-

──────悪夢をたまに見る。
幼い頃、母親に捨てられた時の夢を。

(...まって!! お母さん!!)
(......あんたらなんて産まなきゃ良かった!!)
(っ!!)

「...っ!! ......はぁ。」

最悪な目覚めだった。母は自分たちを捨てて、新しい男の元へ出ていった。
物心着く前だった弟は母親の顔さえ知らない。
父親は母が出ていったショックからか、忙しい仕事により熱中するようになり、ほぼ家に帰ってこなくなった。

「...クソ」

時刻は7時過ぎ。そろそろ学校へ行く準備をしなければいけない。
リビングへ行くと弟の千尋(チヒロ)がもう起きて朝の準備を始めていた。

「あ、兄ちゃんおはよう」
「おはよう、今日は行くのか?」
「...うん、あんまり休んでると勉強ついていけないし...」
「そうか、無理するなよ」

弟は小5にしては小柄で、可愛らしい顔をしている。性格も引っ込み思案で、クラスのいじめっ子に標的にされているらしい。相手は陰湿で、先生に見つからないように小突いたり、わざと聞こえるように悪口を言われたりするらしい。
性格もあってか、クラスメイトにも助けを求められないでいるようだ。
自分も何とかしてやりたいが、そういう奴はずる賢く証拠もないので、教師連中は動かないだろう。
自分にできることは、無理しないように気にかけてやることだけで、それがなんとも情けなかった。