放課後、非常階段で。

カラオケの帰り道。

夜も遅いし送っていくよ、と望くんが言ってくれて
私は家まで一緒に歩いてもらっていた。

歌っている最中はあまり意識していなかったけど、


――これ、普通にデートじゃない?


そう気づいた途端、胸がどきどきし始める。
少し冷たい夜の空気の中、望くんと肩を並べて歩く。

望くんは、さっきまでの熱唱が嘘みたいに、
いつもの物静かな雰囲気に戻っていた。


「そいえば、望くんのさっきのハモリすごかったなー!
ほんと、なんでも歌えるんだね?」

横から顔を覗き込むと、望くんは視線を落として
照れたように首の後ろをかいた。

「いや、そんなことないよ」

と、照れていて、可愛かった。
望くんは学校では、誰にでも話を合わせる。
流行りの映画の話も、最近のニュースも
相手が困らない程度に「あ、それ俺も知ってる」
と言って、にこにこしている。

でも本当は、心の中に‪✕‬‪✕‬‪✕‬‪✕‬という自分だけの聖域を持っていて、そこ以外にはあまり興味がないんだと思う。

ふと、望くんが立ち止まった。
街灯の下で、彼の表情が少しだけ強張る。