放課後、非常階段で。


水曜日の放課後。

今日は、非常階段には寄らずすぐに学校を出た。
そのまま一緒にカラオケの店まで横に並んで歩く。

心地のいい時間はあっという間に過ぎて、
部屋に通される。望くんはソファに腰を下ろすと、
「何歌う?」と聞いてくれた。


「望くんから歌ってよ!最初緊張する!!
何歌うの?やっぱ‪✕‬‪✕‬‪✕‬‪✕‬の金合歓?」

この曲、前に非常階段で望くんが好きって言ってた曲だなあ、と思い出した。

「そりゃ、歌うとしたら‪✕‪✕‬‪✕‬‪✕‬の金合歓かなー
歌ってて楽しいからさ」

それを横目にリモコンで望くんが好きな曲を入れた。
曲が始まり、マイクを渡す。
イントロが流れると、彼はマイクを握って歌い出した。

歌い出した瞬間、私は聞き惚れてしまっていた。

「歌うの苦手だから」

なんて言っていたのに、驚く程にうまい⋯音程は安定しているし、声が曲に合っていてすっと耳に入ってくる。なにより歌っている姿ののぞむくんがかっこよくて、見惚れてしまう。


曲が終わり、拍手をしてしまっていた。

「すご!!!望くん、めっちゃ上手!」

そういうと、望くんは困ったように顔を赤くしてマイクを置いた。その照れた顔に、ニヤニヤが止まらなかった。

その後も、久しぶりに熱唱していたら、あっという間に2時間が経っていた。

この部屋の中だけは、望くんの心から楽しそうな顔を、私だけが独り占めしている気がして。

それが、すごく嬉しかった。