放課後、非常階段で。

望side───

「...悪い、邪魔したか」

そこにいたのは長谷川 蓮(はせがわ れん)
俺と同じ軽音部のバンドメンバーで、音楽の趣味も似ていて昔から仲がいい。

「...そんな関係じゃないから!」

と、慌てて隣にいた彼女が弁解する。

「...他の生徒に見つかったら誤解されるぞ
俺は忘れ物取りに来ただけだから、じゃあな」

と、忘れ物をパッと取り教室を出ていく蓮。

教室を出た蓮を席から見送って、ふと横にいる彼女の方を見る。

彼女は耳まで赤くして俯いていた。それが可愛くて、思わずじーっと見ていた。

「他の場所、探しに行く⋯?」

と、この空気に耐えきれなくなった彼女からの提案。

面白そうだ、とその案に乗る。


それから、あまり使われない教室や中庭、人気のいない渡り廊下、巡った。そして、非常階段。

ここにピンと来たらしく、彼女がここがいい、とはしゃぐ。人気のない廊下を曲がってすぐの所で、重い防火扉の向こうは、外気と静寂が混ざり合う場所だった。
片側が外に開いた非常階段。手すり代わりの厚いコンクリート壁は、放課後の冷たい風も、周りの視線からも遮られる。

俺も気に入って「いいね」と階段に腰を下ろした。

「曲の続き、聞く?」

とイヤホンを手渡すと、彼女が「うん!」
と元気に答えて、隣に座って曲を聞く。


「……また、一緒に聞いてくれる?」

しばらく音楽を聞いていると、隣から声がした。
顔を向けると、彼女は少しうつむいていた。
そんな彼女に、つい頬が緩む。

「いいよ、るなちゃんの好きな曲も聞かせてね」