放課後、非常階段で。


「いつでも、話聞くから のぞむくん、辛かったら話せる範囲ではなして。そしたら全部聞くよ」

ただ、音楽に耳を澄ませた。

望くんは、いつも誰に対しても優しい。

でもそれは、彼が誰よりも「自分が傷つくこと」
を怖がっているからなのかもしれない。

「たまに、その考えが止まらなくなって
呼吸が苦しくなる時があるんだ。

るなちゃんにも迷惑かけるかもしれない

その時はごめん」

私は、望くんが周りに見せている優しい顔より

今ここで震えている少し情けない望くんの方が、
ずっと信頼できる気がした。


「別に、迷惑だって思わないから」


私は望くんの隣に椅子を寄せた。


「望くんが誰にでも優しいのは知ってるけど

私の前では無理に笑わなくてもいいよ。

……その方が、私も話しやすいし」


望くんがゆっくり、私の方へ顔を向ける

「⋯よくわかったね」

いつも通りの話しやすい望くんじゃなくて、少し困ったような、素の表情。

「るなちゃん、変わった子だね」

「どういう意味!」

と、少し怒ってみせた。そしたら、のぞむくんがふっ、と顔を緩ませた。こんなに近くで見る彼の笑顔は初めてで胸が高鳴った。

私たちはふたりで1つのイヤホンをわけたまま、暫く何も話さなかった。

二人の間には音楽だけが流れていた。

ちょうど、間奏で同じリズムが繰り返されている。

その時、後ろから教室のドアが開く音がして、びくっと振り向く。