放課後、非常階段で。

そのまま、非常階段まで逃げるように歩く。

後ろから慌てた足音が聞こえる。

「るなちゃん、待って」

のぞむくんが息を切らして追いかけてきた。

廊下を歩く私の手を引いて来て、立ち止まる。
私は袖で涙を拭って深呼吸をする。

振り向くと、いつもと変わらない、非常階段で話している時ののぞむくんの顔。ようやく、普段の柔かい表情が戻る。肩の力が抜け、安心しきっていた。

「...ごめん。今日、冷たくしすぎたかな」

のぞむくんは続けた。

「でも……暫くは母さんの信頼を取り返さないといけなくて。電話も、非常階段もあんまり行けなくなる」

私はそっと彼の手を握り、言った。

「待ってる、どれだけ時間がかかっても、のぞむくんとの特別な時間はかわらないから」

ゆっくり彼が近づいて、涙を掬ってくれた。

その指がくすぐったくて、ふふ、と顔がほころぶ。

少しだけ話をしようと言ってくれて、いつもの非常階段に連れていってくれた。