放課後、非常階段で。

その姿にのぞむくんのお母さんは満足そうに微笑み、のぞむくんの頭を撫でた。

「ごめんね、望。私はただ心配なだけなの。さあ、帰って話しましょう。一ノ瀬さんも、もう遅いから早く帰りなさいね。お家の方に心配されるでしょう?」

のぞむくんは、目に見えて震えていた。

のぞむくんのお母さんの後を彼は追って、ドアを閉める。

防火扉を閉める前に見えた瞳は、助けを求めているようにも、すべてを諦めているようにも見えた。

扉の音が消えて、非常階段に再び静けさが戻った。

手のひらに残っている温もりだけが、さっきの熱を思い出させる。

(あんまりだよ⋯)

胸がぎゅっと締め付けられ、息が詰まるような感覚。

手を握られた温もりはまだ残っていて、でももう触れられない。

夕方に浮かぶ淡い月が、目に映る。

その星の下で交わした言葉と手の感触だけが、私の心をじんわり温めていた。

でも同時に、のぞむくんともう一度、この場所で向き合えるかどうか、不安でいっぱいだった。