放課後、非常階段で。

のぞむくんはしばらく黙って、私をじっと見つめていた。

いつもの気の利いた返事も、ノリのいい相槌も出ない。

「るなちゃん、それは……」

「⋯ただ、のぞむくんを特別だと思ってるって話」

私はそっと、のぞむくんの指先を握った。

「ねえ、のぞむくん。私だけ、見ててほしいな」

彼の顔に熱が帯び、息が少し荒くなる。

「俺……るなちゃんに、そんなこと言ってもらえるなんて思ってなかったから……。頭の中が、ごちゃごちゃして……」

蝉の声が響く夏の空の下、のぞむくんは意を決したように口を開いた。

「……俺も、るなちゃんを『友達』って呼ぶたびに、なんか違うって思ってたんだ。

るなちゃんをもっと近くに感じたい

独り占めしたいって自分勝手なこと、思っちゃいけないって思ってた」

初めてそんなことを言われて、頭がクラクラし始める。

夏の爽やかな風が頬を撫でる。

そこには、教室で見せる「優しいのぞむくん」でも、

母親の前での「いい子」でもない、

ただ一人の男の子がいた。


「俺も、るなちゃんの特別になりたい。友達っていう言葉で逃げるのは、もうやめたい」

のぞむくんいつもの少し冷たい手が、私の手を握る。

――その時だった。