放課後、非常階段で。

望side───

あのカラオケから2週間が経ち、彼女と知り合って2ヶ月くらいだろうか。

それからも、非常階段での時間は変わらなかった。

今日は同じ軽音部の
五十嵐 響也(いがらし きょうや)
呼び止められて、非常階段に行くのが遅くなってしまった。

少し早歩きして、非常階段の前まで来た。

防火扉を開いて目に映ったのは、彼女が膝を抱えて、泣いている姿。


「るなちゃん?」

「...あ、ごめん。望くん、今日おそかったね」


平気なふりをしているのが、すぐにわかった。
スカートに残ったシワ、濡れた目の縁と、少し赤い目の周り。彼女は声を震わせないように、必死に抑えている。

俺は静かに彼女の隣へ座る。


「...どうしたの?何かあった?」


暫く沈黙が続いた後、少しずつ話してくれた。

お母さんが家に帰ってこないこと。お父さんも夜勤で、毎晩ひとりでご飯を食べていること。他にも、いろいろ相談してくれた。1度話し始めると、止まらなかった。

彼女が落ち着いた後、

「望くんも大変なのに、相談のってくれてありがとう。私、望くんと話してると気が楽になるよ」


俺は黙って彼女の話を聞いていた。

うまい言葉は、相変わらず見つからなかった。