放課後、非常階段で。



私は一ノ瀬 留那(いちのせ るな)

春からこの高校に入学した。
新しいクラスの空気にまだ慣れないまま、
自分の席に向かうと、隣に
如月 望(きさらぎ のぞむ)が座っていた。

「おはよ、如月くん!」

「おはよう、一ノ瀬さん」

隣の席なので、一応挨拶をする。
ここ2週間で、挨拶する程度の関係にはなれた。

如月くんは特別暗いわけではないが、
穏やかな空気を纏っている。


ある日、授業でペアを組むことになった。
最初は少し緊張したが、いざ話し始めると
如月くんとは驚くほど話しやすかった。

わからないところがあって、彼に聞く。

「えっと……ここ、どうやるんだろ?」

如月くんは少し考え込んでから、
落ち着いた声で教えてくれた。

「...この文章から引用してこうやる、と思う」

彼の教え方はとても丁寧で、わかりやすかった。
それからも、私の拙い質問にも決して
馬鹿にすることなく真剣に耳を傾けてくれた。


昼休みに見ている限り、如月くんはノリがいい。
でも、教えるときは真剣で、誠実さが伝わってきた。