「もちろんあるよ。楓限定だけど。
無くなったと思ったの?」
「最近結婚の話が出てこなくなったので…」
「ああ。あまり急かすのも良くないかなって思って。
楓は本当に優しいから、結婚したくなくても、俺からどんどん言っちゃうと折れそうな気がしてさ」
「そういうことだったんですね…」
ー結婚願望がなくなった訳じゃなくて良かった。
「わ、私も結婚願望あります。
というか出てきました。…榊さん限定で」
榊さんの裾を引っ張り、俯きながら言った。
今回俯いているのは、
暗い気持ちなのではなく恥ずかしくて。
榊さんにいきなり抱き締められた。
あまりの力強さにびっくりして一瞬離れそうになったが、
榊さんの心臓の音が聞こえてきて安心して体の力が抜けた。
ー榊さんの心臓の音が早い。
「それ…本気にしてもいいのかな?」
「はい」
「ありがとう。本当に大切にする」
また更に抱き締められ、
さすがに苦しくなって笑ってしまった。
「ふふ。すみません、ちょっと苦しいです」
「ああ。ごめんね。嬉しすぎて」
榊さんが慌てて体の力を緩めてくれた。
「ああ。なんで俺まだお風呂入ってないんだよ…
ちょっと今から急いで入ってくる」
返事をする前に榊さんがすぐにお風呂場に行った。
ーちゃんと話して良かった。
私はニヤニヤしている実感があったが、
一人だったので、隠そうともせず、
そのままニヤニヤしながら榊さんを待っていた。
「ごめん、お待たせ」
榊さんがすぐにお風呂場から出てきた。
想像以上にかなり早いので、
おそらく湯船に浸からず、シャワーだけで済ませて来たのだと思う。
「大丈夫ですか?疲れ取れましたか?」
「大丈夫。もう楓と少しでも離れたくなくて」
思わずふふふと笑ってしまった。
榊さんを見ると少し拗ねているようにも見える。
「可愛い…」
思わず呟くと、
榊さんから「可愛いって言われても嬉しくない」と小声で呟かれた。
そんな姿も愛おしい。
思わずまた少し笑ってしまった。
「髪を乾かしたら…覚悟してね」
榊さんが妖艶な表情でそう言って、すぐドライヤーをしに行った。
ーさっきまで可愛かったのに…
急にまた色気が出てきて、ゾクゾクしながら榊さんの髪が乾くのを待った。


