星空に願うと、甘い記憶が煌めく~あなたのそばに居たい~

今日はいつも通りの平日で、雨も降らずにバスは空いていた。あの日からさらに彼を見つめることが多くなったがあれ以来違う様子の男の子は見れなかった。
そしていつも通り降りようとしてパスケースを取り出してかざそうとしたとき。

「あの、」

聞いたことがないが、低くて透き通った綺麗な声。思わず振り返ると、

「は、はい!」

あの男の子だった。近くで見たら余計にきれいな顔と目に吸い込まれそうだ。

「……落としましたよ。」
「あ、ありがとうございます。」

手には大好きなアニメのキャラのグッズ。受け取って礼を言うが男の子は動かない。このキャラをただ見つめている。もしかして僕も好きですと言いたいのかなと思ったが、運転手さんが待ってるからお辞儀をして向きを変えて降りる。

「いいと思うー?」
「うーん、まあ話す分にはいいんじゃない?」

教室へ入ると、乃愛が椅子に座り頭を抱えて、周りに皆がいた。

「どうしたの?」

私は自分のことは一度、忘れて、乃愛のもとに駆け寄る。話を聞くと、この間、生徒手帳を拾ってくれた男の子に話しかけてもいいかな?という話。その話を聞くとタイムリーな話題に体中から冷や汗が滲み出る。

「でもなんて声をかけよう。」
「初めまして!よろしく!でいいんじゃね?」
「何言ってんの?そんなの警戒されるだけじゃん。」

透の配慮のないセリフに乃愛は鋭い目で睨む。乃愛の場合は恋が関係すると人が変わるから。透はそうか?と気にせず明るいままだ。そんな話をしていると時間がだいぶやばい。私は荷物片づけなきゃ!と焦って離れる。


「行こうか!」

今は移動教室に向かっている途中。皆で雑談しながらのんびり歩いていると、

「恋する乙女達は大変だね。」

冬弥は近寄ってきて囁く。表情を見ると相変わらず何を考えているか分からない。でもミステリアスでも基本は良い人だから仲良くしている。

「達?恋な気がするのは乃愛だけでしょ?」
「そう?僕には美優香もそう見えるけど?」

恋かは分からないけど、どうだろう。と平気なふりをして内心は悩みながら返事をする。

「何に悩んでいるか知らないけど、、」

そう言いながら神絵師レベルで絵が上手い冬弥はノートに書いた私の好きな猫の絵を見せてで元気づけようと見せる。

「これでも見て気持ちを切り替えて。」
「え!いつの間に!ってか、落書きしていいの?」
「まあまあ、分かりやすいアドバイスも言ってるし、見やすいよ?」

冬弥が見せたのは前に見せたのではなく新作のイラスト。猫には吹き出しが書いてあって、そこに、この授業のポイントが書いてある。冬弥のこういうポイントは家に帰って勉強する時に書くから授業中はきちんと授業に集中してるみたい。だからその分、毎日勉強してるからテストの点数は結構高い。私はジーッと見つめて、どうやったら書けるのと質問してると元気になって良かったと思って無さそうな真顔で、良かったと呟く。前を歩いていた三人は思わず振り返ってくる。


「ご乗車ありがとうございます。」

次の日、いつも通りにバスに乗るけどいつもとは違う。普段座る席を通り過ぎて。

(あ、いた。)

今日も座っている男の子の席に近づいて、震える口を開く。

「あ、あの。隣に、……座ってもいいですか?」

思っていたより自分の声は吐く息のように小さかったが、すぐに顔が上がった。

「……はい。」

男の子は一言返事をするとまた小説に戻った。あまり歓迎はされてなさそう。でも私はめげずに話しかけた。

「昨日はありがとうございました。」

本当は言葉より行動をしたいけど、通学中なため何も持って来れず、とにかく警戒されないように丁寧に礼を言う。

「大丈夫です。わざわざありがとうございます。」

男の子は頬を緩ませて爽やかな清涼飲料の広告に出てくる俳優さんみたい。私は反応に安心して同じく頬を緩ませる。自分でも分かるくらい口角が上がっている。

「これ、君も好きなの?」

横に座って、何をしたらいいか分からず前をただ見つめていると声をかけられる。男の子方を見ると、小説は中断していて手にはあのキーホルダーが握られている。

「あ、はい!大好きです!」
「名前は?僕、浅見 伊織(あさみ いおり)、中学二年生。君は?」
「同じ中学二年生で、安達 美優香。」

同い年なんだ。大人っぽい見た目をしてるな。急に話しかけられて脳内の処理が追い付いてないけど何とか答える。

「同い年だから敬語なしでいいよ。よろしく。」

落ち着くような声色と態度に安心しつつも、こんなかっこいい子と話すのが緊張する。

「よろしくお願いします!」
「します?なの?」
「あ、えと、よろしく!」
「うん。よろしく。」

指摘の仕方も相手を傷つけないように軽い冗談っぽいし、見た目と裏腹すぎてギャップがすごい。

「このキャラ可愛いよね。」
「うん!私、猫好きだからこの子好きなの!」
「僕も同じ。」
「私は二匹猫飼ってるけど、浅見君は?」
「いいな、僕の家は一匹。」

クールで綺麗なお兄さんみたいな見た目をしているが中身は思春期なのに異性にも優しい。第一印象が怖かったけど話しかけてよかった。その朝は私が停留所に着くまで途中、間が空いてしまうし、私からだけど、話はしてくれた。浅見君は他の同級生にはいないような雰囲気だけどいい人なんだろうと思い私は仲良くしたいと思った。


「おはよう!」

次の日バスに乗り、いいのかな?と思いながらも、浅見君の隣へ向かう。そして車内なため小さいけど、アナウンサーのように、はきはきとした声で声をかける。

「おはよう。」

すると浅見君は顔を上げて、少しだけ横にずれて私の座るスペースを作ってくれた。私はもう一度喋ってもいいんだ!と心の中で飛び跳ねている。ありがたく隣に座らせてもらった。