星空に願うと、甘い記憶が煌めく~あなたのそばに居たい~

「あ!冬弥!」

カラオケを出てすぐに冬弥から返事が返って来て、今日この後会えるとのことだったので相川君と別れて待ち合わせ場所に向かったらすでに待っていた。

「おはよう。それで突然どうしたの。」

そんなに朝早いわけじゃないのに眠そうに目を擦っている。

「この間、『……記憶とは儚いもの。もし記憶のことで迷うことがあったらいつでも話聞くよ。』って言ってたでしょ?」
「よく覚えてたね。」

冬弥は前からよく私が古い記憶を思い出すと、『よく覚えていたね。』と分かりにくいけどなぜか左だけ口角を上げている。

「と言うことは記憶関連?」
「そう。実はさ、」

私は昨日、相川君から聞いた浅見君について話したが冬弥は表情一つ変えずに聞いていた。まるで知っていたかのように。

「なるほど。それなら役に立てるかも。少し待ってて。」

そう言って冬弥はスマホを開き少し離れて誰かに電話していた。

「はい。はい。分かりました。お願いします。ではあとで。
許可貰ったから行こう。」

電話を切ると私を一回見て歩き出す。行こうって言われたから付いて行っていいのかな?後を追った。

「どこ行くの?」

冬弥は目的を一切言わずに無言で歩き続けること二十分。気が付けば、町中からだいぶ離れた。

「ここだよ。」

ついに話してくれた。と思ったらカフェ?みたいな建物に入っていった。正直怖いけど浅見君に思い出してもらうためだ!と勇気を出してドアを開ける。

「いらっしゃいませ。」

落ち着いた光の入らない暗い店内。マスターというイメージぴったりの店員さん。冬弥はとある人の前で止まった。

「美優香。この人がきっと助けてくれるよ。」

近づいて冬弥の隣に立つと、その人は読んでいる小説から目を上げた。フードをかぶっているのと、暗い店内なため、顔はよく見えないけど芸術品のように整ってていそう。

「え、えと、」
「初めまして。僕はゼロ。」

喋った声色は幼そう。まだ二十代か下手したら十代にも聞こえる。というか、ゼロって零?それとも偽名?聞こうと思ったが圧が凄くて言えなかった。

「君は、美優香さんだね。よろしく。」

一瞬、頭を人差し指で叩くとすぐに私の名前を当ててきた。なんで分かるの?!もしかして事前に冬弥から聞いたよね?そうじゃないと怖いんだけど。大丈夫な人だよね?冬弥を信じないほうがよかった?友達紹介で犯罪とかよくあるよね。

「驚かせてごめんね。もしかして冬弥君から何も聞かされてない?困っちゃうよね。」

見た目に反してだいぶ明るい人なんだな。でもまだ信用してはいけない。

「……ゼロさんは、記憶を操ったり、見たり、できる人で、占い師とでも思えばいい。そして、」

記憶を蘇らせることもできる。」

操る時点で怖いけど、まさか蘇らせるって浅見君の記憶も?

「本当に?」
「冬弥君、紹介の仕方が怖いよ。まるで危ない勧誘の様だろう?」

そう言うってことは安全?段々不安になって来た。

「あの、私、やっぱり、「おや、いいのかい。大切な人に思い出してもらうために来たと聞いたよ?」」

帰ろうと方向転換すると本音をつかれて足が止まる。

「脅すわけではないが、きっと僕以外ではできない。なら話をするだけでもどうかな?」

正直話し方も、雰囲気も詐欺な気がして怖い。でも冬弥を信じようと思いまた体をゼロさんに向ける。

「おお。だいぶ肝の座った子だな。普通ならここで帰ってしまうのに。」
「教えてください。……浅見君の記憶の戻し方を。」


「て感じで、記憶をなくしたようで。」

私は浅見君と出会ってからの出来事をすべて話した。冬弥は隣で何も言わずに聞いてた。

「なるほど。前も一回あったな。恋とは時には何にでも影響をしてしまうようだからね。精神的にも、記憶にも、体にも、」

そんなに恋が大変だとは思わなかった。でも浅見君に恋する前に戻りたいかと言われたらNoだ。

「うーん、中々難しいけど、一つ提案はある。
まずは、日にちを分けてカウンセリングのように美優香さんがどこまでできるか聞こう。そして耐えられそうな限界の方法を試そう。それでいいかな?
怖ければ、毎回冬弥君についてきてもらってもいい。こんなお兄さん胡散臭いからね!」

ゼロさんは冬弥みたいに顔は見えないが唯一見える口角を上げる笑い方をする。しかも、カウンセリングって意外とちゃんとしてるね。怖いけど信じてみよう。

「お願いします。」
「はーい。」


その日から週に一日程度一時間くらいカウンセリングが始まった。私の考え方、性格、行動などを見るためだそうだ。

『嘘はついてもバレるからね』

と恐ろしい事を言われたので嘘はつかないように話した。不安なため一応冬弥にはついてきてもらった。

「いや、本当に美優香さんは記憶力よくて楽しいよ。」
「同じくです。この記憶力があれば、……」

いつも話終わると二人は私の話について語り合うのを見る限り、似た者同士のようだ。前に関係を聞くと、冬弥の家族の知り合いという曖昧な答えしか返ってこなかったが聞いてほしくなさそうなので聞かなかった。そして今日は私の記憶力について語り合っている。正直言われることはあったがこんなんに褒められるのは初めてでいいのか分からないが、心がポカポカする。

「では、そろそろいいでしょう。
記憶の取り戻し方を考えましょう。」