星空に願うと、甘い記憶が煌めく~あなたのそばに居たい~

「ありがとうございます。」

やっぱり出会ったころのように分厚い壁がある対応の仕方。ああ、私の事忘れちゃったの?

「!
大丈夫ですか?」
「え?あ、す、すみません。なんでだろう。」

気が付くと頬に涙が伝っていた。今泣いたら浅見君を困らせるだけ。だから一生懸命に涙を拭くが止まらない。すると、頬に温かい感触がして顔を上げると、浅見君が私の頬を触って涙を拭いてくれた。

「え……?」
「あ、あれ。何してんだろう。ごめ、」

ハッとして手を引っ込めた浅見君のあの大きな水晶玉から綺麗な大粒の涙がこぼれていた。もしかして浅見君は記憶の奥底では覚えてくれてるのかな。

「……ごめんなさい。僕、変ですね。知らない人との知らない記憶がぶわーッと来て。すみません。こんなこと知らないのに言われても。ですよね。」

そう言って浅見君は涙を拭き、座りなおして景色を眺めていた。本当に記憶を忘れてしまったことは悲しいけど、もしかしたら記憶が戻るかもしれない。でもそんなの解決方法を知っている人もいないし、調べようがないからどうしようもない。


「美優香!大丈夫?」

学校へ着くと、真っ先に乃愛が飛んできて病み上がりな私に気を付けて、潤んだ瞳で私の手を握って来た。

「大丈夫だよ。ありがとう。」
「……そっか。」

これ以上しつこく聞いたら、嫌がると思ったのか、今日は何も聞かれなかった。


「そういえば、乃愛、例の彼とはどうなの?」

休み時間中に皆で話していると、日和が話のネタをと思ったのか、乃愛に声をかける。乃愛は誇らしげに笑いカバンからウサギのキーホルダーを取り出した。


「それこの間のデートでもらったんでしょ?」
「……ふーん。」

良かったじゃん、と褒める日和といじける透。私も言わなきゃ。おめでとうって。

「おめでとう。」
「ありがとう。」

涙を出さずになんとか、無理やり笑顔をみせれた。嬉しすぎて気づいてないのか乃愛は顔を染めていた。


「ふう。」

放課後になりみんなで放課後遊ぼうと準備していた時、先生に呼び出されたので先に帰って、後のことは連絡してと言い、職員室へ行き、帰って来た。要件はこの間の一時間目になっても学校に来なかったことだ。浅見君のことは説明したくないから、適当に猫を見ていたら時間が経っていたということにした。先生は言いたくないことがあるのだろうと察してすぐに返してくれた。

「本当に大丈夫かな。」

教室へ戻ろうと扉に手をかけるとみんなの話している声がする。先に帰っててって言ったのに待ってくれてたんだ。と言っても途中までしか一緒に帰れないけど。教室には乃愛たち以外いないみたい。廊下も少ない人しかいなくて 静か。

「最近様子変だよな。」
「美優香にも美優香なりの考えがあるんでしょ。」

私の話か。確かに最近みんなには心配かけすぎてるよね。なんとなく入りづらくて聞き耳を立てるようになってしまう。

「……助けを求めていたらいつか声をかけてくれるさ。」

冬弥がボソッとつぶやいた言葉にみんな納得したようだ。なんで冬弥って全てを見透かしているような発言ができるのか。少し怖いよね。

「あ、そういえばさ、みーちゃんがさ、」

みーちゃんとは透のお姉ちゃんのことだ。話が変わりほのぼのとした話になって空気が温かくなったので私は教室へ入った。


その日から浅見君の記憶がなんとか戻らないか、何回か物を落としたふりをして様子を見ながら話したけど、次の日には忘れているようだ。これ以上、何もできないからお手上げだ。毎日学校に行くのが憂鬱で冗談も言えない。

「ねえ、どこ行こうか?」

気が付けば、もう二月か。早いな。みんなで春休みの話をしているが、ここ数日、私は上の空。常に浅見君のことが頭をよぎり、その度に唇を噛んで涙を流さないようにしていた。

「まずお泊まりは決定だよね!春休みだから、遊園地とかどうかな?」
「じゃあ、絶叫系で!」
「えー!?私無理だよ!」

気が付けばお泊まりの予定の計画が進んでいた。ちなみ保護者はお休みが取れる誰かの親が付いて、連れて行ってくれる。私にも聞かれたがいいんじゃない。と一言告げると様子を見てだめだと思ったのか誰も話しかけてこなかった。

「ってか、乃愛は彼とも出かけるんじゃないの?そんなに長期間私たちと旅行に行ってていいの?」
「うーん、確かに!でもみんなともお泊まりしたいしなー。」
「いいんじゃね。最近よく会ってるんだし、年に数回しかない俺らの旅行を優先しよ。」

悩んでいる乃愛に自分では気づいてないが、乃愛のことが気になっている透は嫉妬したようだ。

「えー。ってか透そんなに私と一緒に居たいの?」
「え!!」

乃愛は冗談で言ったようだが透は顔を一気に赤くして顔を隠した。それを見た乃愛は自分の恋愛には疎いため、なんでこんな反応をするのか、本気で困っているようだ。

「まあ、いいや。あ、でも、美優香もまずいからもう少し日程空ける?」

なんでまずいのか分からなくてポカーンとしていると、乃愛はニヤニヤしながら近づいてくる。

「彼と行かないのー?」

その瞬間、思い出さないようにしていた浅見君の顔を思い出し、一気に視界がぼやける。

「え、ご、ごめん!どうしたの?どこか痛い?」

片手で手を握って片手で頭を撫でて安心させようとしてくる乃愛に心で言う。

『浅見君はもう頭を撫でてくれないんだよ。』